研究課題
本研究ではヒト三次元培養皮膚モデルおよびマウス皮膚を用いて皮膚疾患の発症や悪化とリン脂質動態の関連を解明することを目的とした。炎症性皮膚疾患の一つである乾癬のモデルマウスの皮膚を解析したところ、PIP3の下流シグナルが過剰活性化していることが判明した。また、肥満時に見られる乾癬の症状悪化にもPIP3の下流シグナルの過剰活性化が関与している可能性を見出した。さらにリン脂質代謝酵素であるホスホリパーゼC delta1を欠損したマウスは乾癬に一部類似した皮膚炎を示したため、ホスホリパーゼC delta1を欠損したマウスの皮膚においてもPIP3の下流シグナルについて検討したところ、乾癬のモデルマウスと同様にPIP3の下流シグナルが過剰活性化されていることが明らかになった。次に、ホスホリパーゼC delta1の減少時に細胞内情報伝達経路にどのような変化が見られるかについて解析を行ったところp38 MAPKの過剰活性化が誘導されることが明らかになった。また、ホスホリパーゼC delta1を減少させたヒト三次元培養皮膚モデルおよびホスホリパーゼC delta1を欠損したマウスの皮膚をp38 MAPKの阻害剤で処理することにより皮膚バリア機能を増強できることを明らかにした。さらに乾癬のモデルマウスの皮膚をp38 MAPKの阻害剤で処理することにより皮膚炎症の程度を軽減することにも成功した。本研究結果により代謝酵素の異常によるリン脂質動態の変化が炎症性皮膚疾患の発症や悪化に関与することが強く示唆された。
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Cell Death and Differentiation
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10.1038/cdd.2017.56.
Journal of Biochemistry
巻: 161 ページ: 315-321
10.1093/jb/mvw094
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