研究課題/領域番号 |
26440045
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
高野 和儀 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 助教 (60466860)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | N-WASP / nebulette / 心臓 / 筋肥大 / ノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
当該年度は心筋特異的誘導型N-WASP コンディショナルマウスのC57BL/6系統への戻し交配を行った。第5世代のC57BL/6系統における当該マウスにおいて,タモキシフェンの投与により心筋特異的にN-WASPを欠損させたところ,心肥大が認められた。したがって,N-WASPが心臓の機能維持に関わる可能性が考えられた。また,心筋におけるN-WASP結合蛋白質としてAmphiphysin 2/BIN-1 isoform-8 (Amph2-iso8) を同定した。Amph 2-iso8 はBARドメインスーパーファミリーに属する蛋白質であり,筋収縮に必要な筋小胞体とT管の密着構造の形成や筋発生時における核動態を制御する膜変形蛋白質であることが知られている。そこで,N-WASPとAmph2-iso8の結合を調べたところ,Amph2-iso8のSH3ドメインを介してN-WASPのプロリンリッチ領域と結合することが明らかになった。しかし,nebuletteとN-WASPの結合とAmph2-iso8の結合は二者択一的であることから,Amph2-iso8はN-WASP-nebulette複合体形成を抑制的に制御しうると考えられる一方で,N-WASP-nebulette複合体を保持させたまま機能抑制に働く蛋白質ではないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心筋特異的誘導性N-WASPコンディショナルノックアウト (N-WASP cKO) マウスの作製が比較的スムーズに行うことに成功したため,当該年度以降にも本格的に使用することが出来るようになった。また,このN-WASP cKOマウスの心筋において心肥大が認められたこと,および,心筋におけるN-WASP結合タンパク質の同定においても計画に沿った実験が進んでいることから,概ね順調な進捗であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後においては,N-WASP cKOマウスの組織学的な解析をさらに進め、N-WASPの心肥大への生理的関与を明らかにする。また,N-WASP cKOマウスの心臓にアデノ随伴ウイルスベクターを用いてEGFP-alpha-actinを発現させることにより,心筋細胞の筋原線維形成におけるN-WASPの生理的な役割を強固に示す。また,N-WASP変異体を発現するAAVベクターの発現を行うことにより,N-WASPのどのドメインが心筋の機能維持に関与するかを明らかにする。一方,当該年度同様にN-WASP結合タンパク質のさらなる探索を行い,N-WASP-nebulette複合体に拮抗する役割をもつ蛋白質を明らかにする。さらに,培養心筋細胞においてN-WASP FRETバイオセンサーおよび同定したN-WASP結合タンパク質を発現させたのちに様々なシグナル伝達因子の阻害剤を添加する。この解析により,N-WASP結合タンパク質によるN-WASPの活性調節を制御するシグナル伝達経路をライブセルイメージングにより明らかにする。
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