研究実績の概要 |
セプチン細胞骨格は14種類のサブユニットからなる細胞分裂蛋白質として発見された。分裂細胞においては収縮環や鞭毛のリングの構成成分として、多数の分子を集積し相互作用させる足場として、また、細胞の微小領域における分子の局在や非対称性を保証する拡散障壁としての役割が報告されている(Sharma et al., Nature 2013; Koch et al., Cell 2015)。一方で最終分化した神経系で最も高発現し、アルツハイマー病(Kinoshita et al., Am J Pathol 1998)やパーキンソン病(Zhang et al., PNAS 2003)のような神経疾患にも関与することが示唆されている。申請者らはこれまでにセプチンがHDAC6による微小管脱アセチル化の物理的足場として働くことで、微小管の安定化レベルを最適化し神経突起伸長を制御することを見出した(Ageta-Ishihara et al.,Nature Commun 2013)。さらに成体小脳では、バーグマングリアにおいてセプチン-CDC42EP4(セプチン会合分子)複合体はグルタミン酸トランスポーターGLASTを平行線維-プルキンエ細胞間シナプス近傍に集積させる足場として機能し、グルタミン酸クリアランスと運動学習を促進することを見出した(Ageta-Ishihara et al., Nature Commun 2015)。今年度は長期記憶ないしL-LTPを維持する構造的基盤を支える細胞骨格系の協調作用の中でセプチン系が果たす役割を生理的コンテクストで理解するため、分子・細胞レベルから個体レベルまでの異なる階層を縦断的、統合的に解析した。
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