研究課題/領域番号 |
26450070
|
研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
下田 武志 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター病害虫研究領域, 主任研究員 (20370512)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 昆虫 / 生態学 / 農学 / 土着天敵 / ダニ |
研究実績の概要 |
①天敵トラップの開発と誘引メカニズムの解明: ハダニが寄生するコマツナ株(コマツナトラップ)やインゲンマメ株(インゲントラップ)を用いた天敵捕獲試験をチャ園内や周辺環境で行い、トラップの形状や設置場所、設置時期が捕獲数に及ぼす影響を調査した。チャ園や周辺環境ではハダニの有力土着天敵である4種類の天敵昆虫(ケシハネカクシ・クロヒメテントウ・ハダニアザミウマ・ハダニタマバエ)の発生密度が低く、これらの目視観察は困難であったが、そのような状況下でも両トラップには4種類の天敵昆虫が多数捕獲され、本研究課題のテーマである「見えない天敵を効率的につかまえる」ことに成功した。また、インゲントラップでは葉上の毛に天敵昆虫が絡まり、天敵回収率が低い一方、コマツナトラップでは天敵回収率が高く、生きた状態での天敵回収にはコマツナトラップが適していることが明らかとなった。 ②コマツナ等を用いた天敵増殖法の開発: ハダニ寄生コマツナ株をアクリル製の大型飼育容器に定期的に導入し、4種類の天敵昆虫を簡易に飼育する方法を開発した。これにより、本研究課題のテーマである「飼えない天敵昆虫を簡単に増やす」ことに成功した。 ③天敵昆虫の生態解明と放飼効果の検証: チャ園や周辺環境において捕獲される天敵昆虫の種類や個体数を調査した結果、コマツナトラップやインゲントラップにはハダニタマバエが最も多く捕獲され、いずれの調査地でも優占種となった。また、コマツナトラップで回収された天敵昆虫を②の簡易飼育法で増殖することに成功した。さらに、その過程で、ハダニタマバエ幼虫に寄生する寄生蜂も回収することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
下記の3テーマについて、以下の通りである。 ①天敵トラップの開発と誘引メカニズムの解明: 天敵トラップの開発、ならびにチャ園や周辺環境での天敵昆虫捕獲試験について、H26年度の計画通りに調査を進めた。天敵昆虫の目視観察が困難な状況下でも天敵トラップによる捕獲・回収が可能であることを実証し、誘引メカニズムの解明につながる貴重な知見を得た。さらに、H27年度計画の一部を前倒しし、生きた状態での天敵回収率をトラップ間で比較を行い、コマツナトラップの優位性を示した。本項目については、当初予定以上のペースで研究調査が進んでいると言える。 ②コマツナ等を用いた天敵増殖法の開発: H26年度の計画通り、ハダニ寄生コマツナ株を用いた簡易飼育法を開発し、好適飼育条件の絞り込みや飼育効率等を明らかにした。本項目については、当初予定通りのペースで進展していると言える。 ③天敵昆虫の生態解明と放飼効果の検証: H26年度の計画通り、天敵トラップを用いた調査をチャ園や周辺環境で実施し、天敵昆虫類の種構成や発生状況等に関する知見を得た。また、コマツナトラップで回収した4種類の天敵昆虫を用い、これらを室内で簡易増殖することに成功したほか、これまで研究が殆ど進んでいない天敵昆虫(ハダニタマバエ)に寄生する寄生蜂を生きた状態で効率的に回収することに成功し、当初予定にない副次的な成果を得た。本項目については、当初予定以上のペースで研究調査が進んでいると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
①天敵トラップの開発と誘引メカニズムの解明: 26年度に開発された天敵トラップを用い、より効率的に天敵昆虫を捕獲・回収するための最適設置条件の絞り込みを行う。天敵昆虫のトラップへの誘引メカニズムについては、室内研究調査を行い、誘引成分の絞り込みを進める。 ②コマツナ等を用いた天敵増殖法の開発: 4種類の天敵昆虫を対象とした簡易飼育法について、餌や植物の種類を変えた場合の天敵飼育についても比較検討を行い、最適飼育条件の絞り込みを進める。 ③天敵昆虫の生態解明と放飼効果の検証: 天敵トラップを用いた野外調査を継続し、天敵昆虫温存場所としての周辺環境の重要性を示す。トラップで回収した天敵昆虫を②の手法で簡易増殖し、これらを用いた薬剤感受性試験等を行う。ハダニタマバエに寄生する寄生蜂の種類や発生消長を解明するためのトラップ調査を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額11,858円は、飼育試験に必要となる種子・培養土等の使用を効率的に進めた結果、発生した残額である。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、次年度に請求する研究費と合わせて、飼育試験に必要となる種子・培養土等の購入等、研究計画遂行のために使用する。
|