①天敵トラップの開発と誘引メカニズムの解明:前年度に続き、ナミハダニ寄生のコマツナ(コマツナトラップ)やインゲンマメ(インゲントラップ)を用いた天敵捕獲調査を果樹園(ナシ園やチャ園等)で実施した結果、ハダニの土着天敵昆虫類(ハダニタマバエやハダニアザミウマ等)が捕獲された。インゲントラップでは天敵が葉上のカギ状毛に捕捉されて死亡することが多く、コマツナトラップでは生きた状態で容易に捕獲できた。また、果樹園で天敵昆虫が目視確認されない時期にも天敵昆虫がトラップに捕獲される場合があり、園周辺の街路樹(サワラ等)を詳細に調査したところ、天敵昆虫が低密度に生息することが判明し、トラップを使用すれば調査ができることが分かった。誘引メカニズムについては、トラップから放出されるサリチル酸メチル等の揮発性情報化学物質(Herbivore-induced plant volatiles)に誘引されることが行動観察やGC-MSによる化学分析から示唆された。 また、チャ園で問題となるチャトゲコナジラミについても、天敵寄生蜂シルベストリコバチの野外調査や行動観察が難しいことから、天敵を生きた状態で捕獲するトラップ(ミカントゲコナジラミ寄生ミカン)を開発した。 ②コマツナ等を用いた天敵増殖法の開発:ナミハダニ寄生コマツナ等を用いた上記の天敵昆虫類や土着カブリダニの簡易増殖法を前年度までに開発したが、害虫化のリスクが低いナミハダニモドキを用いた天敵増殖法を開発した。また、ミカントゲコナジラミ寄生ミカンを用いたシルベストリコバチの簡易増殖法を開発した。 ③天敵昆虫の生態解明と放飼効果の検証:最終年度に予定していた、簡易増殖した天敵を用いた薬剤感受性試験を実施した。ハダニ寄生コマツナで飼育した上記4種の天敵昆虫類、およびケナガカブリダニを用い、各種の殺虫剤や殺ダニ剤、殺菌剤を用いた感受性試験を実施した。
|