研究課題/領域番号 |
26460048
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
米持 悦生 星薬科大学, 薬学部, 教授 (40201090)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リポプレックス / ナノ粒子 / 小角散乱 / ITC / MADG |
研究実績の概要 |
siRNAの構造的・静電気的性質を利用したリポソームとsiRNAの複合体ナノ粒子は、siRNAのDDS手法の一つとして検討されている。昨年度の研究では、OH-NC-を結合させた正電荷コレステロール誘導体を用いた脂質ナノ粒子が、siRNAによる遺伝子発現抑制効果において、他の製剤よりも高い効果を発揮することが明らかとなった。本製剤がその機能を十分に発揮するためには、細胞内への取り込み後に、細胞質へ効率よく放出される必要があり、ナノ粒子製剤の構造最適化および複合体構造の形成メカニズムの解明が必要な段階となった。 今年度は、これまでの不十分であったナノ粒子の調製方法の改善、さらに、調製後の安定性の向上を目指し、複合体形成過程を、放射光小角X線散乱測定および等温滴定型カロリメトリー(ITC)により検討した。小角X線散乱測定により、siRNAとリポソームの複合体では、3nm程度のラメラ構造が生成することが明らかとなった。また、このラメラ構造間の水の存在領域にsiRNAが存在することも示唆された。さらに、生成したナノ粒子のラメラ間隔が、調製に用いた正電荷コレステロール誘導体の分子構造と関連していることが明らかとなった。また、ITCより、複合体形成時の熱力学パラメータが算出され、複合体粒子の安定化メカニズムが予測可能であることが示唆された。 また、固形製剤化のための基礎検討として、Moisture Activated Granulation (MAG)法による造粒方法について検討した。使用した添加剤の種類、添加水分量が好ましい粉体の製造に重要であることが明らかとなった。今後は、ナノ粒子製剤の製剤開発を進めるため、添加剤のスクリーニング、凍結乾燥法等による固形製剤化の検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調製条件が最適化された脂質ナノ粒子について、液中における粒子内の微細構造、および安定化メカニズムを明らかとするため、小角散乱X線測定を用いて検討した。放射光施設での実験の結果、微粒子調製に用いた、コレステロール誘導体、界面活性剤の違いにより、ラメラ構造の違いが明らかとなっており、構造物性評価は順調である。 凍結乾燥後の微粒子の安定化については、安定化剤として期待されているアミノ酸と有機酸の組み合わせについて、最適化には至っておらず、固形製剤化への検討は今後の課題と言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討から得られた最適処方の微粒子製剤について、X線小角散乱測定を行い粒子の内部構造の詳細についてさらに検討を進める。 また、正電荷リポソームと負電荷ポリマーの分子間相互作用について、ITCを行い熱力学パラメータを見積もる。 固形製剤として耐えうる安定性を確保するため、高分子、アミノ酸-有機酸の新規複合体などの安定化剤のスクリーニングを進める。
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