研究実績の概要 |
siRNAとリポソーム複合体ナノ粒子は、siRNAのDDS化技術の一つとして認識されている。昨年度の研究では、ナノ粒子の調製方法の最適化、さらに、調製後の粒子の安定性の向上を図るため、複合体の構造を放射光小角X線散乱測定(SAXS)より、生成過程を等温滴定型カロリメトリー(ITC)により検討した。複合体ナノ粒子は、使用する脂質の違いにより異なるラメラ構造を形成し、ラメラ内外の水相中にsiRNAが存在していることが明らかとなった。しかし、構成脂質の組成と生成する構造との関係性は不十分であったため、より詳細な複合体形成メカニズムの検討、また、凍結乾燥に耐えうる十分な復元性を有するナノ粒子の組成検討の段階に入った。 今年度は、凍結-融解過程における安定性・復元性の高いナノ粒子複合体の設計を行うため、複数の正電荷脂質およびリン脂質の組み合わせ・組成について、siRNAとの複合体を作成し、その形成過程をSAXS, ITCにより評価した。検討の結果、複合体粒子は、炭素鎖内の二重結合の数に応じて、シングルラメラ、マルチラメラ、および凝集体を形成し、構造が異なることが確認された。構造データ解析により、二重結合を持たず分子の嵩が低い脂質では膜密度が高かった。さらに、二重結合を含む脂質組成の増加に伴い膜密度が低下しており、構造転移のしやすさは膜密度に依存していることが明らかとなった。 固形製剤化手段である凍結乾燥に対する安定性については、種々の組成のナノ粒子を凍結乾燥後再溶解し、粒子径の変化から検討した。その結果、糖類、ポリアミノ酸類の添加により、再溶解後のナノ粒子の凝集を低減できることが明らかとなった。また、膜密度と復元性に相関があることが示唆された。しかし、すべての組成のナノ粒子の安定化は困難であったため、新規な固体状態の調製方法、複合体晶析法について検討し適用の可能性が示唆された。
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