研究課題/領域番号 |
26460095
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
日比 陽子 名古屋大学, 医学部附属病院, 薬剤師 (70295616)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | Neuronal PAS domain 4 / 遺伝子欠損マウス / GABA受容体 / 精神疾患 / 脳 |
研究実績の概要 |
NPAS4は、GABA作動性抑制性神経の発達やシナプス形成との関連が報告される転写因子である。NPAS4がストレスにより発現低下することから、この転写因子がストレス・GABA神経系障害・精神症状発症の関係の鍵であると考えられる。そこで本研究では、NPAS4の発現減少とGABA作動性神経系の機能異常との関連を調べる。平成26年度は、全身性NPAS4遺伝子欠損 (NPAS-KO) マウス脳内のGABA作動性神経関連分子の発現解析およびNPAS4-KOマウスの精神疾患様行動発現解析をおこなった。 13~26週齢のNPAS4-KOマウスおよび野生型マウス(C57BL/6)から脳の各部位(前頭前皮質、側坐核、線条体、海馬、小脳)を採取し、GABAA受容体サブユニット、GABAB受容体サブユニットおよびGABA作動性神経関連分子のmRNA発現レベルをreal time RT-PCR法により解析した。GABA作動性神経関連分子の発現は、NPAS4-KOマウスの線条体においてGABAA α3, α5, β3サブユニットおよびGABAB R1, R2サブユニットmRNA量が野生型マウスに比べて有意に低下した。Npas4-KOマウスの小脳ではα2, α3, β1を除く全てのGABA受容体サブユニットmRNAレベルが顕著に低下した。また行動試験として、行動量測定、オープンフィールド試験、高架式十字迷路試験、Y字型迷路試験、新奇物体認識試験、恐怖条件付け試験、社会的行動試験、PPI試験およびロータロッド試験を行ったところ、Npas4-KOマウスは多動、不安関連行動の減少、恐怖記憶の低下と共に、PPIの障害を示した。また、協調運動や運動学習能力の低下も認められた。以上の結果はNPAS4の減少がGABA受容体発現異常や精神疾患行動発現につながることを明らかにするものであり、現在投稿準備中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の目標は、(1)全身性Npas4遺伝子欠損(Npas4-KO)マウスの行動解析およびGABA受容体サブユニットの発現変動を解析する。(2)部位特異的にNpas4遺伝子を欠損する系の確立。(3)ストレス負荷マウス脳におけるNPAS4発現変動やNPAS4プロモーターDNAメチル化頻度の変動を解析する。(4)健常ボランティア血液を用いた遺伝子解析のため倫理委員会への申請を行う。であったが、これまでの研究によりNpas4-KOマウスの行動解析は終了し、成体マウスでのGABA受容体サブユニットの発現変動も解析した。現在これらの結果をまとめ投稿準備中である。部位特異的Npas4-KOマウスについてはCreを発現するウイルスをNpas4 flxマウスに注入し、部位特異的なNpas4発現消失を検出する系を構築中である。ヒト血液における解析については、倫理委員会への申請準備中である。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)全身性Npas4-KOマウスの小脳切片をプルキンエ細胞マーカーであるcalbindinやparvalbuminで染色し形態を解析する。また、Npas4-KOマウスのストレス応答性について調べる。 (2) Npas4-floxマウスの脳各部位にCreウイルスを感染させることで部位特異的Npas4-KOマウスを作製する系を完成する。そして、Npas4の部位特異的欠失により発現する精神疾患様行動を解析する。また、それぞれの部位のGABA受容体およびNMDA受容体の発現変動を確認する。 (3)ストレス負荷マウスのNpas4発現レベルやNpas4プロモーターDNAメチル化頻度を解析し、左右脳で比較する。 (4)ヒト血液におけるNpas4遺伝子解析を行うため倫理委員会への申請を行い、許可を得られたら実験に取り掛かる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の研究遂行に必要な消耗品の一部が、平成25年度に購入した消耗品の残分で賄われたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
・mRNA変動を検出するための、RNA精製用のキット、逆転写酵素、リアルタイムPCR用キットを購入する。また、生化学的解析に用いる各種抗体を購入する。また、生体内におけるNPAS4プロモーターのDNAメチル化変動を調べるための、ゲノムDNA精製キット、PyroMarkシステム用解析試薬、プレート、オリゴヌクレオチドを購入する。さらに、in vitroにおける免疫組織学的解析のための各種試薬を購入する。 ・本研究で得られた成果の公表のため論文投稿費に使用する。また、日本神経精神薬理学会年会、日本薬理学会、および日本薬学会年会における研究成果発表のための旅費として使用する。
|