ヒト膀胱尿路上皮癌細胞では、エストロゲン受容体β(ERβ)と各種エストロゲン合成・代謝酵素が発現していること、ERβは癌細胞の遊走能や癌の進展に関与する遺伝子の1つであるMMP11の発現量を抑制していることが確認された。一方、上記エストロゲン合成・代謝酵素の発現量は癌の深達度の上昇により有意に低下していた。以上より、ヒト膀胱尿路上皮癌細胞では局所で合成されたエストロゲンが癌細胞に発現するERβを介して癌の進展を調節している一方、進行した膀胱尿路上皮癌ではこれらの酵素の発現低下により局所で合成・代謝されるエストロゲンの関与が低下することで、癌の進展に影響が生じている可能性が示唆された。
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