我々は卵巣明細胞癌についてMET遺伝子の増幅があることを報告しているが、研究期間中には総説として報告を行った(Ovarian cancer: new developments in clear cell carcinoma and hopes for targeted therapy. Jpn J Clin Oncol. 2015 May;45(5):405-7.)。そこで、本研究では卵巣明細胞癌以外におけるMET遺伝子の増幅に着目し、種々の婦人科乳腺腫瘍の臨床検体を用いて解析を行った。結果的にはHER2遺伝子非増幅ホルモンレセプター陰性の乳癌におけるMET遺伝子増幅の頻度は低いことが明らかとなり、これはpublic databaseのデータともよく一致していることから、信頼性の高い結果であると考えられた。一方で、一部の婦人科系腫瘍ではそれよりも高い頻度で増幅が見られることが判明した。これらの腫瘍は比較的頻度が低く、十分な解析が困難であると考えられたため、現在さらなる解析を行っている。これらの結果を第73回、第74回の日本癌学会学術総会にて発表した。また、一方で ヒト卵巣明細胞癌をヌードマウスに移植したモデルにおけるMET阻害剤の効果について最近、Kim HJらによって報告されているが(c-MET as a Potential Therapeutic Target in Ovarian Clear Cell Carcinoma. Sci Rep. 2016 Dec 5;6:38502.)、我々の系においては現時点では明瞭な結果が得られていない。理由としては、卵巣明細胞癌の皮下移植がやや困難であり、阻害剤の投与方法などの条件が難しかったことが挙げられるが、今後さらに検討していく必要があると考えている。
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