研究課題
ラブドイド様変化はあらゆる癌腫において見られる現象であり、予後不良因子の一つとしてあげられている。今年度はラブドイド細胞が出現してくるような肉腫様変化をきたす腫瘍として尿路上皮癌を選択し、それを解析した。1189例の尿路上皮癌を組織学的に再評価し、その中からラブドイド様変化を含む肉腫様変化を抽出したところ10例(0.8%)が該当した。それらについて、SWI/SNF型クロマチンリモデリング因子複合体を構成する蛋白であるSMARCB1 (INI1)、SMARCA4 (BRG1)、SMARCC1 (BAF155)、SMARCA2 (BAF170)、ARID1A蛋白発現を免疫組織化学染色にて評価した。その結果、10例中5例でいずれかの蛋白が陰性となった。その5例のうち2例はINI1とBRG1両方ともに陰性で、それに加えてBAF155ないしBAF170も陰性であった。それ以外の3例では各々1種類ずつの蛋白(BRG1が2例、BAF170が1例)が陰性であった。軟部腫瘍では、上記構成因子の中でもINI1遺伝子異常が悪性ラブドイド腫瘍や類上皮肉腫に認められるが、INI1蛋白陽性の場合には、それ以外の蛋白発現異常が報告されている。肉腫のみならず、上皮性腫瘍における、ラブドイド様変化においても同様のことが今回の結果で明らかになった。これらのことはあらゆる癌腫においてみることができる形態学的に特徴のあるラブドイド様変化は、クロマチンリモデリング因子複合体を構成する蛋白異常に起因する可能性が考えられた。
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