研究課題/領域番号 |
26460570
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
藤間 真紀 新潟大学, 自然科学系, 助教 (40542246)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自己免疫 / 自己抗体 / B細胞 |
研究実績の概要 |
IκBNS-/-マウスではB-1細胞や辺縁帯B細胞の分化に障害があるが,これらの細胞の分化にはB細胞受容体シグナルの強度が重要だと考えられている。そこで,野生型B細胞とIκBNS-/-B細胞のB細胞受容体シグナリングを比較したところ,IκBNS-/-B細胞ではB細胞受容体を介したNFATc1の発現低下とNF-kB活性の増強が見られた。このことから,IκBNSがB細胞受容体シグナルの強度に関与していることが示唆された。 また,前年度に続いて,新生仔胸腺摘出による制御性T細胞の減少に起因する自己免疫性胃炎をBALB/cマウスに誘導して,自己免疫の発症と病態形成における自然免疫様B細胞とそれらが産生するIgM自然抗体の役割を調べた。生後3日目に胸腺を摘出したマウスに,新生仔期から腹腔に純水を投与することでIgM自然抗体を産生するB-1細胞除去する処置を行ったところ,胃炎の発症率が低下する傾向が見られた。一方,B-1細胞と血清IgMを欠損するIκBNS-/-マウスに自己免疫性胃炎を誘導したところ,自己免疫性胃炎の発症率は野生型マウスとIκBNS-/-マウスとで有意差は見られなかったが,IκBNS-/-マウスでは胃粘膜組織への広汎な炎症性細胞の浸潤,特に好中球の浸潤が目立つ病態を示した。今後はこのような病態を生じる原因を明らかにしていく。 さらに,種々の自己免疫様の症状を呈するFaslpr/lprマウスを用いて自然抗体の役割を明らかにする目的で,B6.lpr/lpr背景のIκBNS-/-マウスを作成した。今後はB6.lpr/lprマウスとIκBNS-/-マウスを比較し,IgM自然抗体の有無が自己抗体の産生や組織障害の程度に影響するかを明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験に多くの時間を割いたため,自然免疫様B細胞の分化機序を探る実験が予定より遅れている。自己免疫のモデルとして,新生仔胸腺摘出によって誘導される自己免疫性胃炎を用いたが,野生型マウスにおいても胃炎の発症率が安定しない時期があり,動物実験の進行が数ヶ月間停滞した。その原因を検討したところ,生後3日目という胸腺摘出のタイミングが非常に重要であることが考えられ,処置のタイミングを半日以内の誤差にすることで改善できた。また,遺伝的に自己免疫症状を呈するFaslpr/lprマウスを用いるなど複数の実験モデルを利用することで,今後は動物実験の停滞が最小限になるようにした。
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今後の研究の推進方策 |
自己免疫における自然免疫様B細胞の機能や自然抗体の役割については,これまで通り動物実験を主に進めて行く。実験に必要な動物の作成や自己免疫モデルの確立,実験の条件検討などは前年度までに概ね終えたので,今後は細胞免疫学的手法,組織学的手法を用いて病態解析を中心に行う。また,前年度の研究結果からIκBNSの欠損がB細胞受容体シグナリングにおけるNF-κB活性の強さに影響することが示唆されたので,NF-κB-IκBNSの相互作用が自然免疫様B細胞分化にどのように関与しているのかを明らかにし,通常の獲得免疫を担うB-2細胞とは異なる自然免疫様B細胞の分化機序を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験に予定よりも多くの時間が割かれたため,当初予定していた遺伝子解析実験と細胞培養実験に要する費用が少なかった。また,毎年行ってきた学会への参加や研究発表が,スケジュールが合わなかったために出来なかったので,旅費等がかからなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
現在では動物実験での問題が解決し,その他の実験は遅れを挽回すべく進めている。そのため,実験動物の購入,飼育費用の他,前年度に予定していた遺伝子解析実験と細胞培養実験に必要な機器と消耗品を今年度購入する。また,前年度出来なかった国内および国際学会での研究成果発表を予定しており,これらは計画通り行う。
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