研究実績の概要 |
HCVの粒子形成は脂肪滴近傍の小胞体膜上で起こり、脂肪滴形成がウイルス産生にきわめて重要である。HCV感染に伴う脂肪滴形成にはウイルス蛋白質Core, NS5Aや、宿主因子DGAT1, TIP47, ApoB, ApoEが重要とされるが、未だ全貌は明らかでない。近年、脂肪滴形成の制御機構の解明が進み、宿主因子SPG20,ユビキチンリガーゼAIP2/AIP4/AIP5, Adipophilinが重要な調節因子として同定された。そこで、本研究では、HCV感染における脂肪滴形成にSPG20, AIP2/AIP4/AIP5, Adipophilinなどの宿主因子が果たす役割を解析した。HCV J6/JFH1をHuh7.5細胞に感染させ、AIP4の蛋白質量, リン酸化Itch, JNK1, c-Jun, リン酸化c-Junの量の変化を各種抗体を用いたウエスタンブロット法で解析した。以前に我々が報告しているようにHCVcc感染後、JNK1が活性化された。これにはROS産生が関与していると考えられた。また、HCVcc感染後、JNK1が活性化に伴い、AIP4のリン酸化が亢進した。また、脂肪滴結合蛋白質であるAdipophilinの量が減少し、SPG20の発現量も減少した。SPG20は脂肪滴の大きさの調節に関与することが報告されている。HCVcc感染細胞と非感染細胞をBodipyで脂肪滴の染色を行い、大きさを比較したところ、HCVcc感染により脂肪滴の肥大化が認められた。HCVcc感染に伴うJNK1やAIP4のリン酸化の変化が脂肪滴形成の促進に関与する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度はHCV感染細胞における脂肪滴調節系への影響を解析した。実験系としてはHuh-7.5細胞にHCV J6/JFH1を感染させ、 AIP2/AIP4/AIP5, Adipophilinの 蛋白質量およびリン酸化状態をウエスタンブロット法で定量した。また、細胞内脂肪滴の観察を行い、HCV感染細胞と対照細胞をBodipy染色で脂肪滴を染色し、Biozero BZ-9000で観察し、計測画像処理モジュールで脂肪滴サイズを比較した。脂肪滴とAIP4, Adipophilin, SPG20の細胞内局在をBodipyと各抗体を用いて免疫蛍光染色法にて脂肪滴と各蛋白質の細胞内局在を解析しており、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Adipophilinの蛋白質半減期解析を行う。HCV感染細胞と非感染細胞でAdipophilinの半減期を Cycloheximide chase実験にて行う。HCV感染によるSPG20, AIP2/AIP4/AIP5, AdipophilinのmRNA量をreal time PCR法で解析する。また、SPG20のリン酸化、メチル化、モノユビキチン化、SUMO化などの翻訳後修飾を各種抗体にて解析する。各HCV蛋白質の関与について解析する。さらに各genotypeのキメラウイルスを用いて脂肪滴制御蛋白質への影響を検証し、特異性を解析する。さらに初代ヒト肝培養細胞 (primary human hepatocyte)を用いた解析を進める。
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