研究課題
肝細胞内の脂肪滴がHCV粒子産生の中心的役割を果たすことが知られている。本研究ではHCV感染による脂肪滴形成機構について解析した。ヒト遺伝性皮質脊髄系神経変性疾患Hereditary spastic paraplegia(HSP)の研究でSPG20遺伝子が原因遺伝子として同定された。SPG20の細胞内機能が解析され、脂肪滴サイズ調節の制御因子であることが明らかにされた。SPG20は脂肪滴に結合する宿主蛋白質でPPxY motifを有し、AIP4などのHECT型ユビキチンリガーゼのWW domainと結合し、脂肪滴近傍へとリクルートする。そして、脂肪滴に結合したアディポフィリンをユビキチン化し、プロテアソーム依存性に分解し、脂肪滴巨大化を静止させる。つまり、アディポフィリンが存在する間は脂肪滴が大きくなり続け、アディポフィリンが分解されると脂肪滴の形成は停止しやがて消退する。我々はSPG20に注目し、これまでにHCV NS3/4AプロテアーゼがSPG20を切断し、脂肪滴巨大化を誘導することを示唆する実験結果を得た。これまでに1)HCVcc感染Huh-7.5細胞でSPG20が切断される、2) HCV NS3/4Aを一過性にHuh-7細胞に発現させるとSPG20が切断される、3) 不活化型NS3/4AではSPG20は切断されない、4) NS3/4A阻害剤でSPG20の切断が抑制されるが、NS5A阻害剤では変化がないことから、HCV NS3/4AプロテアーゼがSPG20切断する活性であることが強く示唆された。以上のようにNS3/4AプロテアーゼによるSPG20の切断と脂肪滴巨大化における役割について解析した。
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