研究課題
グリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK-3β)活性によるミトコンドリア透過性遷移孔(mPTP)開孔は虚血再潅流障害による心筋細胞死や、不全心における心筋細胞死を惹起し病態の増悪に寄与する。そこで、GSK-3βによるミトコンドリア透過性遷移孔(mPTP)開孔分子制御機構の解明を目的として研究を行った。(1)GSK-3βは酸化ストレス下ではvoltage dependent anion channel2(VDAC2)との相互作用によりミトコンドリアへ移行すること、(2) N末端のK15がミトコンドリア移行シグナルとして機能していることを見出した。GSK-3βはそのリン酸化状態によりmPTP開閉の制御および細胞生存/細胞死に相反する影響を与える。そこでその調節機構について心筋細胞のミトコンドリア分画を分離し、さらにtrypsin digestionにより外膜、内膜、マトリックス分画に分け検討した。(3)GSK-3βを制御するERKおよびAktはいずれも酸化ストレスによりミトコンドリアへ移行した。ERKは主に外膜へ、Aktは外膜、内膜へ均等に分布した。(4)リン酸化ERKおよびリン酸化AKtは酸化ストレスにより著明に減少した。 (5)IGF-1投与は酸化ストレスによるERK、Akt、GSK-3βの脱リン酸化を抑制した。(6)ERKおよびAktの特異的な脱リン酸化酵素であるDusp5およびPHLPP1は酸化ストレスにより、それぞれ外膜、内膜へ移行することが確認された。(7) GSK-3βのN末端K15が蛋白脱アセチル化酵素SIRT3の標的であることが報告された。心筋細胞においてミトコンドリアのSIRT3レベルとGSK-3βレベルには負の相関が見出された。今後はDusp5, PHLPP1, SIRT3によるGSK-3βのミトコンドリア局在制御が細胞死に影響を与えるかを検討する。
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