研究実績の概要 |
GERDによる咳嗽機序の一つに, 逆流により下部食道の迷走神経が刺激され, 迷走神経反射を介した気道の咳受容体感受性亢進が想定されている. 咳感受性亢進に伴いサブスタンスP(SP)などの神経ペプチドの関与が考えられるが不明な点が多い.組織学的検討はまだ未検討だが、GERDによる咳嗽とSPの関与を検討した.8週間以上持続する咳嗽があり,胸部X線写真で異常がなく,問診上GERDを疑わせる患者27名(52.9歳,男11名)を対象に、ラベプラゾール20mgとイトプリド150mgを4週間投与した.GERD治療前後で咳visual analog scale(VAS), FSSG(GERD問診票), 誘発喀痰, 肺機能, カプサイシン咳感受性検査を施行した. 咳VAS改善率が50%以上をResponder群(n=16), それ未満をNon-responder群(n=11)に分類した.
GERD治療後, 咳VAS(p<0.0001), FSSG(p<0.0003)の有意な改善を認めた. Responder群において咳VASの改善率は酸逆流スコアの改善度と有意な正の相関(r=0.45, p=0.03)を認め, 咳感受性は有意に改善した(p-0.04). Responder群はNon-responder群に比べ治療前の咳感受性が有意に亢進し(p=0.03), 喀痰SP濃度が高い傾向にあった.
GERDによる咳嗽機序に咳感受性の亢進とSPが関与している可能性が示唆される.今後は食道粘膜組織のタキキニン(SPやCGRP)陽性神経線維やTRPV1の発現を検討し臨床症状との関連について検討する予定である。
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