研究課題
胃食道逆流症(GERD) に伴う慢性咳嗽は欧米だけでなく本邦でも明らかに増加しており 治療に難渋する症例も多い。 近年、GERD患者の食道粘膜で侵害受容器であるTRPV1の発現増強が報告されている。食道への酸暴露がTRPV1を活性化し、GERD症状を惹起する機序が想定されるが、GERDによる慢性咳嗽患者の食道粘膜における神経原性炎症の存在や,TRPV1発現と咳嗽との関係については不明である。本研究の目的は本病態におけるTRPV1および神経原性炎症の関与を検討し、治療標的分子としての可能性を探る。GERDによる咳嗽患者37人およびGERD咳なし患者5人において食道粘膜生検を施行し、GERD咳患者においてはラベプラゾール20mgおよびイトプリド150mgを4週間投与した。治療前GERD咳患者の食道粘膜のTRPV1mRNAは,GERD咳なし患者と比べ有意に高発現していた。GERD治療後、咳VAS、咳関連QOL質問票(JLCQ)、GERD問診票(FSSG)は有意に改善し、咳VAS改善率とFSSG改善率との間に有意な正の相関を認めた。治療反応非良好群に比し反応良好群において血漿サブスタンスP濃度低下率と喀痰好中球%低下率は有意に大きく、両変化率との間に有意な相関を認めた。本研究の結論として、GERD治療による鎮咳効果は好中球性炎症および神経原性炎症の改善による可能性が示唆される。TRPV1はmRNAレベルにおいて、GERD咳なし群に比し、GERD咳あり群で有意な発現を認めるが、今後はさらに免疫染色やウェスタンブロットなど蛋白レベルでの発現や、喀痰や血漿SP濃度、症状スコアなど臨床指標との関連などの検討を行っていく。
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