研究課題/領域番号 |
26461293
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
奥野 龍禎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00464248)
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研究分担者 |
中辻 裕司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20332744)
甲田 亨 大阪大学, 医学部附属病院, その他 (70626134)
多田 智 大阪大学, 微生物病研究所, 研究員 (70626530)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 多発性硬化症 / 神経変性 / 血管 / Sema3E / 実験的自己免疫性脳脊髄炎 |
研究実績の概要 |
進行型多発性硬化症(MS)は再発寛解型MSと病態が異なり、神経変性疾患としての側面が強く、予後を改善させる薬剤は存在しないため、原因解明と新たな治療の開発が切望されてきた。免疫細胞をターゲットとした治療法は有効性が証明されていないため、様々な治療法開発のアプローチがなされてきたが、MSの中枢神経系では血流が低下していることが以前より知られていること、さらに最近神経から分泌されるプロスタサイクリンが血管新生を促し、EAEの症状を改善させることが報告されたことから、血管及び血流が治療ターゲットの一つと考えられるようになった。 Sema3Eは遊離型のクラスⅢセマフォリンであり、受容体はPlexin-D1である。Sema3Eの機能は血管内皮細胞に発現したPlexin-D1を介した血管新生抑制であるとされているが、我々はMSの髄液ではSema3Eが増加し、さらにMSの動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎がSema3E欠損マウスで軽症化することを見出している。 本年度は血流増加の神経変性に対する治療効果をプロスタグランジンI2アゴニストを神経変性モデル(G93A変異SOD1トランスジェニックマウス)に投与することにより確かめた。プロスタグランジンI2アゴニストは生存期間には影響しなかったが、発症後の運動機能が有意に改善し、血流増加が神経変性に有効である可能性が示された。MSについてはサンプル数を増やし、さらに多数例での検討ができるよう準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により血流増加が、神経変性による運動症状の改善に役立つことが明らかになった。今後この知見を基に動物実験を推進していく。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により血流増加が、神経変性による運動麻痺の改善に役立つことが明らかになった。これまでのデータからは、中枢神経系で増加したSema3Eが、脊髄における血管新生を抑制し、血流低下を促していると考えられる。MSのサンプル数を増やして、より詳細に検討するとともに、計画通り動物モデルを用いた検討を進める。中枢神経系に増加するSema3Eの関与を明らかにする目的で野生型C57BL/6マウスとSema3E欠損マウスに野生型MOG反応性CD4+T細胞移入を行い、EAEの症状を評価する。EAEにおける脱髄、軸索障害、細胞浸潤はそれぞれ脊髄組織切片に対してLFB染色、銀染色、HE染色を行い評価する。我々はこれらの組織学的検討には十分習熟している。またSema3E欠損マウスでは新生血管の増加が予測されるが、新生血管は抗エンドグリン(CD105)抗体で脊髄組織切片に対して免疫染色を行うことにより評価する。またSema3Eの産生源についてはこれまでの培養細胞を用いた検討ではアストロサイトが推定されているが、EAEの脊髄において抗Sema3E抗体と抗GFAP(アストロサイト)、IBA1(ミクログリア)、NG2(オリゴデンドロサイト前駆細胞)、CNPase(オリゴデンドロサイト)SMI31及びSMI32(ニューロン)抗体等との免疫二重染色を行い、産生細胞同定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた実験予定が変更となり、計上していた物品が不必要となったため次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降で新たに実験に必要な抗体、ELISAキットなどの物品を購入していく予定である。
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