研究課題/領域番号 |
26461309
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澤本 伸克 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90397547)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / 神経機能画像 / ネットワーク / 視床下核 |
研究実績の概要 |
神経変性疾患では、疾患ごとに特定の神経細胞が障害されやすいが、その障害がどのようにして空間的に拡がるのかは明らかではない。本研究では、運動障害を呈する神経変性疾患を対象として、神経障害が内因性機能ネットワーク依存性に起こるという仮説を検証する。具体的には、安静時の機能的磁気共鳴画像法 (fMRI)で同定される内因性機能ネットワークの空間分布パターンと、臨床症候との関連を検討する。結果に基づいて仮説を検証すると共に、新しい診断法やバイオマーカーとしての利用を模索する。 平成27年度は、パーキンソン病患者を対象とした撮像とその解析を行った。パーキンソン病患者17名を対象に3テスラ高磁場MRIを用いて、機能的結合を評価する安静時fMRI、灰白質の脳萎縮を評価するMRI脳構造T1強調画像、線条体のドパミン神経終末変性の空間分布を評価する[11C]-CFTポジトロン断層法(PET)を撮像した。画像解析用計算装置で作動するFSL software (http://www.fmrib.ox.ac.uk/fsl/)と[11C]-CFT PETデータを用い、ドパミン神経終末変性の空間分布を同定した。安静時fMRIは、0.1Hz 以下の低周波のゆらぎ成分に着目して解析した。これまでの解析で、線条体及び視床下核を含む回路の機能的な結合が、パーキンソン病患者の動作緩慢の程度と相関して増強していることが示された。したがって、線条体及び視床下核を含む回路の異常な機能的結合が、動作緩慢の原因となっていることが示唆される。この結果から、視床下核の深部脳刺激術が、異常な機能的結合を軽減することで効果を発揮している可能性も推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に撮像した健常被験者に加えて、平成27年度はパーキンソン病患者17名を対象に3テスラ高磁場MRIと[11C]-CFT PETを撮像した。これまでの解析で、線条体及び視床下核を含む回路の機能的な結合が、パーキンソン病患者の動作緩慢の程度と相関して増強していることが示された。したがって、線条体及び視床下核を含む回路の異常な機能的結合が、動作緩慢の原因となっていることが示唆された。今後はさらに詳細な解析に進む必要があるが、本研究はここまでおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
アルツハイマー病、前頭側頭型認知症や原発性進行性失語症などの神経変性疾患は、疾患ごとに特徴的な空間分布パターンの脳萎縮、臨床症候が認められる。この特徴については、特定の内因性機能ネットワークの脆弱性、そのネットワークへの過剰負荷、あるいはネットワークを介した異常蛋白の伝播など様々な解釈が提案されている。現時点で結論は得られていないが、神経変性疾患の病態を考える上で興味深い。 平成28年度は、神経変性疾患患者の撮像をさらに進める。また、今後はさらに詳細な解析に進む必要がある。 安静時fMRIで同定される内因性機能ネットワークの空間分布と、脳萎縮などの空間分布が一致するのであれば、病態に内因性機能ネットワークが何らかの形で関連することも示唆される。結果の解釈にあたって、その内因性機能ネットワークを構成する領域間に解剖学的結合が推定されるかどうかは有用な情報と考えられる。病態への関連としては、特定の内因性機能ネットワークの脆弱性、そのネットワークへの過剰負荷、あるいはネットワークを介した異常蛋白の伝播などが考えられうる。本研究のみではその解釈について結論を得ることはできないが、神経変性疾患の病態理解のために重要な知見と考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は、新たな解析ソフトなどを購入せずに解析を遂行することが可能であったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額が生じたが、平成28年度は、健常者と神経変性疾患患者の比較検討など、さらに詳細な解析などの目的で使用を計画している。
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