研究課題
神経変性疾患では、疾患ごとに特定の神経細胞が障害されやすいが、その障害がどのようにして空間的に広がり、臨床症候に至るのかは明らかではない。本研究ではパーキンソン病を対象として、ドパミン神経終末及び神経細胞体の障害と内因性機能ネットワークの異常がどのようにして空間的に広がるのか、そしてどのようにして臨床症候に至るのかを解明することを目指した。具体的には、ドパミントランスポーターシンチグラフィの線条体取り込みによってドパミン神経終末の変性、ニューロメラニンMRIの中脳黒質信号強度を使ってドパミン神経細胞体の障害、安静時の機能的磁気共鳴画像法 (fMRI)を用いて内因性機能ネットワークの異常を評価するとともに、臨床症候との関連を検討した。発症5年以内の早期パーキンソン病患者では、ドパミントランスポーターシンチグラフィの線条体取り込み低下と共に、運動緩慢が重症化する傾向が認められた。また、線条体取り込み低下が顕著な線条体尾側では、局所の安静時機能ネットワークの結合増強と運動緩慢の重症化が関連していた。これらの結果から、線条体のドパミン神経終末の変性によって、局所で異常な内因性機能ネットワークが形成され、運動緩慢につながる可能性が示唆された。一方、発症5年以上の進行期患者では、ドパミントランスポーターシンチグラフィの線条体取り込みではなく、ニューロメラニンMRIの中脳黒質信号低下と運動緩慢の重症度が関連していた。この結果から、線条体のドパミン神経終末の変性が早期の運動症候に関わる一方で、中脳黒質のドパミン神経細胞体の障害が進行期の運動症候に関わる可能性が示唆された。また、ドパミン神経変性が神経終末から始まり、細胞体へと進む可能性も考えられた。
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