研究課題/領域番号 |
26461362
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
村上 和敏 岡山大学, 大学病院, 助教 (40620753)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脂肪細胞 / 肥満 / 一次繊毛 / アクチン |
研究実績の概要 |
OLETF (Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty)ラットの内臓脂肪組織で発現が上昇し、CTX遺伝子ファミリーに属する膜蛋白であるACAM/CLMP (adipocyte adhesion molecule/ coxackie- and adenovirus receptor-like membrane protein)を同定した。aP2 promoterによるACAM transgenic (Tg)マウスは高脂肪高蔗糖食群でwild type (WT)マウスに比べ白色脂肪の重量とサイズの減少を認め体重増加が有意に抑制されたため、ACAMは脂肪細胞の分化増殖に強く関与していると推測される。加えてわれわれは、ACAMが上皮系細胞の一次繊毛に発現していることを見出しており、ACAMが一次繊毛の機能や細胞内シグナル制御を介して脂肪細胞の分化増殖に関与していると考え、この分子機構の解明を研究目的とする。 3T3-L1脂肪細胞においてACAM mRNAの発現は分化誘導後6-12時間で最も増強し48時間以内に一旦低下、その後再び12-14日目に発現が上昇する2峰性のパターンを示す。特に分化誘導初期の6-12時間でのACAM mRNAの発現ピークは、ヒト白色脂肪細胞の分化過程で認める一次繊毛の一過性発現(PNAS 10:1820-5, 2009)の時相と一致していることから、ACAMの脂肪細胞分化への関与は一次繊毛の発現や形態変化に関係していると推察され、蛍光染色法や免疫電顕法に加えsiRNAシステムを用いて詳細に検討する。また、3T3-L1細胞において、ACAMがどのような細胞内アダプター分子や細胞内シグナル分子を介して脂肪細胞の分化や形態変化に関わっているのかを探索し同定することで、肥満症やメタボリックシンドロームなどの疾患群におけるACAMの役割を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでにわれわれは、ACAMが上皮系細胞の一次繊毛に発現していることを見出していることから、3T3-L1脂肪細胞とC57BL6マウス精巣周囲脂肪組織の一次繊毛におけるACAMの発現確認実験を行った。共焦点顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いて詳細に検討したが一次繊毛の確認は困難であった。このため、現段階では脂肪細胞の一次繊毛におけるACAMの発現は確認できていない。 しかしながら、別途並行して行った3T3-L1脂肪細胞におけるACAMの相互作用分子を同定する実験により細胞骨格蛋白である-actinを同定した。この知見に加え、ACAMは上皮系細胞ではTight junctionにおける接着分子として機能していることから、ACAMは脂肪細胞において細胞接着やアクチン重合を介することにより細胞骨格の変化をもたらし脂肪細胞の肥大化を抑制していると考え、引き続き機能解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
WTマウスとACAM Tgマウスの精巣周囲脂肪組織を用いてPhalloidin(重合アクチン)とACAMの2重染色を行ったところ、PhalloidinはACAM Tgマウスでより強く染色され、その部位でACAMとマージしている様子が観察された。 この結果を受けて、今後はさらに詳細な検討を行う目的で走査型電子顕微鏡と透過型電子顕微鏡を用いてWTマウスとACAM Tgマウス精巣周囲脂肪組織の細胞間構造の違いについて観察する。さらに、これらの組織を免疫電顕法で観察することにより、細胞表面や細胞間における-actinとACAMの発現について検討を行い、3T3-L1脂肪細胞とマウス精巣周囲脂肪組織から抽出した蛋白を用いて免疫沈降法を行い、-actinとACAMの相互作用についてより詳細に確認する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
共焦点顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いた3T3-L1脂肪細胞とC57BL6マウス精巣周囲脂肪組織の一次繊毛におけるACAMの発現確認実験に時間を費やした。達成度としては概ね順調に経過しているものの、染色と顕微鏡による観察に時間を費やしたためsiRNAを用いたノックダウン実験などが計画通り実施できなかったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の通り、別途並行した実験によりACAM相互作用分子である-actinを同定した。この知見もとに、ACAMが脂肪細胞において細胞接着やアクチン重合を介して細胞骨格の変化をもたらし脂肪細胞の肥大化を抑制していると考え、走査型電子顕微鏡や免疫電顕法による詳細な脂肪細胞の観察、さらに免疫沈降法などによる機能解析を行う予定である。
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