研究実績の概要 |
関節リウマチ患者における自己抗原特異的CD4陽性T細胞の関与の解明および治療応用を目的として、患者末梢血・関節滑膜におけるHLA-DR4拘束性T細胞受容体のレパトア解析、抗原特異的T細胞の表現型の解析を行っている。関節リウマチにおける自己抗原であるBiPに着目し、BiP特異的CD4陽性T細胞の同定を進めた。BiP336-355エピトープ特異的T細胞によるIL-17に代表される炎症性サイトカイン産生は関節リウマチ患者で亢進していた。この反応は健常人にはみられなかった。一方、BiP456-475エピトープ特異的T細胞はIL-10依存的に炎症性サイトカイン分泌を抑制し、BiPに対する自己免疫応答がエピトープレベルでのバランス異常に起因する可能性が示唆された。またBiP456-475エピトープはマウス関節炎モデルの重症度を抑制し、制御性T細胞を誘導することを証明し、治療応用の可能性が考慮された。 関節リウマチ患者における末梢血、関節T細胞受容体(TCR)レパトア解析については、MiSeqを用いたNGS解析の条件検討を行っている。2サンプルのパイロット解析では、CXCR4陰性CD4陽性細胞群におけるTCRレパトア多様性の減少および関節TCRレパトアとの類似性が示唆された。現在関節リウマチ患者より細胞収集、ライブラリ作成を行っており、数十名規模での解析を準備中である。またシングルセルレベルでのTCR解析とNGS解析を並行して2例の患者で行い、関節リウマチにおけるTCRレパトアの減少を確認した。また増殖しているクローンのシングルセルにおける遺伝子発現解析ではGZMB, TBX21, IFNGamma, CXCR4, CD5発現が亢進していることを同定し、これらの遺伝子制御による関節リウマチ治療の可能性について推察された。
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