肺炎マイコプラズマ(Mp)肺炎は慢性閉塞性肺疾患chronic obstructive pulmonary disease (COPD)を増悪させる原因の一つである。本臨床知見に基づき、「肺炎マイコプラズマ肺炎とCOPDとは共通の炎症メカニズムを有する」との仮説を立てて研究を行った。本研究目的に即した喫煙曝露マウスモデル およびマイコプラズマ肺炎マウスモデルを確立し、解析を加えたところ、両動物モデルともに、肺の炎症反応に好中球が関与していると考えられた。さらに、マイコプラズマ肺炎マウスモデルで、IL-17の関与が示唆されたため、IL-17A/F両遺伝子欠損マウスを用いて、IL-17A/F遺伝子欠損が喫煙短期曝露への反応に及ぼす影響を検討したところ、MMP-9の発現低下や好中球の遊走の抑制が認められた。さらに、24週にわたる長期曝露へ与える影響を、画像解析によるmean linear interval (MLI)や肺胞の単位面積あたりの数等を用いて検討した。その結果、野生型では、気腔の開大が認められ、ヒトの肺気腫症に相当する変化と考えられたが、IL-17A/F遺伝子欠損マウスでは、喫煙曝露群と環境気曝露群(対照群)とで差がなく、気腫性変化が抑制されていることが示唆された。以上より、喫煙が肺に与える影響にIL-17A/Fが関与していることが示された。 さて、本実験系では、肺の気腔の状態を評価するため、マウスをsacrificeする必要があり実験には数多くのマウスを要することとなった。ヒトCOPD患者では、シワが増加することが示されており、肺の生理学的変化と皮膚の弾力性の変化とが関連することが示されていることから、喫煙曝露マウスの皮膚の変化(弾力性)を検討することにより、同マウスの肺の生理学的変化をsacrificeすることなく予想できるのではないかと考えられた。
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