研究課題
もやもや病は、小児~若年成人に好発する進行性脳動脈閉塞症である。もやもや病の疾患感受性を高める遺伝子としてRNF213遺伝子が知られている。これまでの研究で本遺伝子のR4810K多型を有すると、発症リスクがおよそ200倍上昇することを明らかにした。しかし発症には、本多型以外に他の遺伝的要因の存在が強く疑われる。そこで患者とその両親(トリオ)の全エキソーム解析を行い、本多型に注目したデータ解析を試みた。現在まで、30トリオでシーケンスを終了し10トリオでデータ解析を終了した。もやもや病非発症の日本人集団575人のデータと比較し、一般集団において出現頻度の稀な低頻度多型を抽出した。新生突然変異や、劣性遺伝形式に従う多型については複数家系で共通の遺伝子上にはなかったが、2つの遺伝子において、1家系で新生突然変異、1家系で一般集団に全くみられない多型が同定された。これまで染色体構造異常を伴う1例のゲノム構造解析から、3番染色体領域にもやもや病責任候補領域を同定している。本候補領域上にあって、患者のみに見られる低頻度多型は3遺伝子にそれぞれ1個、1遺伝子に2個であった。RNF213遺伝子に注目すると、現在までデータ解析が終了した16人の患者について、5人で5種類のR4810K多型以外のミスセンス変異が同定され、これらは健常集団では認めなかった。一方429人の一般集団中、低頻度多型が28人で23種類見つかった。またもやもや病に先天性腎尿路奇形を合併した3家系を解析し、RNF213遺伝子の多型をいずれの家系でも同定した。それ以外に3家系共通で1遺伝子に多型が見られた。
2: おおむね順調に進展している
初年度に目標とした30トリオの全エキソームシーケンスを終了し、データ解析を進めている。RNF213遺伝子のR4810K多型、染色体上のもやもや病との関連が疑われる領域、あるいは先天性腎尿路奇形を合併する特殊家系の存在、といったいくつかの視点からエキソームデータを解析し、もやもや病の疾患関連候補遺伝子を複数同定している。
もやもや病家系のデータ解析を進めて、疾患関連解析を行う。先天性腎尿路奇形合併のもやもや病3家系については、RNF213遺伝子の多型が疾患に関与している可能性が大きく、別の遺伝子が疾患を修飾している可能性も考えられるので更なる検証を検討する。
全エキソーム解析に使用する次世代シーケンサー関連試薬の購入を予定より遅らせたため、次年度使用額が生じた。
平成26年度に購入予定であった次世代シーケンサー関連試薬を27年度にあわせて購入する。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件)
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