研究課題
我々は本研究の予備的研究として、自殺既遂者500例と健常者サンプル8000例のGWASを施行し、PTCHD3遺伝子および隣接するRAB18遺伝子関連のSNP がp value = 1×10-7~-5のクラスターを形成することを見出した。この数年間で保有する自殺既遂者DNAが900サンプルに達したため、新規の健常者サンプルと併せて、上述のクラスターを形成するSNPについてTaqmanプローブ法によるvalidation解析を行った。in vivo実験としては、2週齢のC57BL/6マウスの脳組織におけるPTCHD3とRAB18の発現分布をISH法により確認した。PTCHD3は全体的に発現が弱いものの、視床や視床下部、中脳、橋、延髄に比較的強い発現を認めた。RAB18は脳組織全体に豊富な発現を認めた。拘束ストレスを用いたうつ病モデルラットの前頭葉・海馬においてPTCHD3発現の有意な増加を、また扁桃体においてRAB18発現の有意な減少を認めた。これらより我々は自殺の生物学的機序として、中枢神経系でのPTCHD3増加とRAB18減少が関与している可能性があると考えた。in vitro実験として、当実験室にて確立した新生仔マウス海馬由来神経幹細胞の初代培養系において、強制発現ベクターを用いたPTCHD3の過剰発現と、RNAi法によるRAB18遺伝子発現ノックダウンの処置を実施し、増殖・分化・生存といった細胞表現型に来す変化を解析したところ、RAB18遺伝子発現抑制にて神経幹細胞の増殖・生存の増加を認めた。900例を越える自殺既遂者DNAを保有していることは世界的にも稀有であり、現在追加のGWASを行うとともに、自殺感受性遺伝子の同定及び動物・中枢神経系細胞モデルを用いた分子生物学的機序の解明を進めている。
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