研究課題/領域番号 |
26461906
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 和重 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (40375043)
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研究分担者 |
藤盛 啓成 東北大学, 大学病院, 准教授 (50238622)
西村 隆一 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (90710864)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カルシニューリン阻害薬 / 中枢神経毒性 / 脳内移行 / 脳血液関門 / ビリルビン |
研究実績の概要 |
免疫抑制剤のひとつであるカルシニューリン阻害剤(CNI)の登場により、移植成績は飛躍的に向上した。しかし、免疫抑制療法の中心的な役割を担うCNI製剤による副作用、とりわけ中枢神経毒性は移植患者の生活と質を著しく低下させる。臨床症状は、手指の振戦から白質脳症に伴う痙攣や視野障害、意識障害を呈し、移植後1ヶ月以内の早期に発症する。1991年より当科において肝臓移植後、CNIによる白質脳症と診断された症例は、CNIで導入した160例中11例(6.9%)であった。白質脳症と診断された11例は、移植時年齢が8歳より15歳に集中していた。18歳未満の症例(N=79)中、白質脳症と診断された患児では、移植後3週以内に発症し、移植後早期の血清総ビリルビン値が高く遷延し、TAC血中濃度は同等あるいは低いにもかかわらず、体重で換算したTAC総投与量が少ないことが明らかになった。多変量解析では、年齢が8-15歳、移植後平均血清ビリルビン値が7 mg/dL以上であることが危険因子と考えられた。他施設では、CNIによる中枢神経障害の発症が移植臓器別では肝臓が最も多く、心臓、腎臓あるいは膵臓では少なく、肺移植では重症感染等による敗血症を合併した子供の発症率が高いと報告されている。幼児・小児は脳の大部分において血液脳関門が未発達であり、その機能が不十分である。これらの報告を考慮し、肝移植後早期のサイトカイン血症あるいは肝機能低下に伴う高ビリルビン血症がCNIの脳内移行に何らかの影響を及ぼし、低濃度のCNIが脳内に移行し中枢神経障害(白質脳症)が発症している可能性が示唆された。以上より、学童期の肝移植においては、移植後遷延する高ビリルビン血症あるいは随伴する高サイトカイン血症がCNIによる中枢神経障害の発症の初期過程に関与していることが示唆され本研究の発想に至った。
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