研究課題/領域番号 |
26461935
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
土川 貴裕 北海道大学, 大学病院, 講師 (50507572)
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研究分担者 |
平野 聡 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50322813)
七戸 俊明 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70374353)
中村 透 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70645796)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 膵癌 / 抗癌剤 / MDSC / GM-CSF |
研究実績の概要 |
この2年間の研究で抗癌剤や放射線照射が癌細胞に対する直接の殺細胞効果以外に、宿主の癌局所免疫環境を修飾し予後に影響を与える可能性があることが明らかになった。 このメカニズムとして抗原提示機構であるHLA class I分子の発現低下抑制、CD4,CD8陽性Tリンパ球浸潤の促進や抑制性T細胞(Treg)の浸潤抑制が関与することを切除標本の免疫組織学的解析を行うことによって明らかにした。またこの局所免疫修飾作用は癌種と抗癌剤の組み合わせにより免疫増強にも免疫抑制にもなり得ることも判明した。さらに抗癌剤が膵癌局所の免疫系に与えるメカニズムを解析するために、ヒト膵癌培養細胞を用いた実験系を構築した。in vitroの実験系で、膵癌細胞に対してGemcitabine,5FUを至適濃度で添加共培養したところGM-CSF(顆粒球単球コロニー刺激因子)の発現亢進と共に、ミエロイド細胞からMDSC(Myeloid-derived suppressor cells)への分化促進とT細胞の増殖阻害が生じることが示された。抗GM-CSF抗体を用いて阻害実験を行ったところMDSC誘導、T細胞増殖阻害が抑制され、この活性化にはMAPKやNF-kB経路が関与することが示唆された。さらに68例の膵癌切除切片TMAの免疫組織学的解析によりGM-CSF強発現症例は有意に予後不良で、術前化学療法施行症例では有意にMDSCが増加することが明らかとなった。以上の研究成果をCancer Researchへ報告しpublishされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では平成27年度においては、抗癌剤による癌細胞表面の免疫マーカーを検討する予定であったが膵癌細胞とMDSCを用いたin vitroの解析が予想以上に進み、またGemcitabineが局所環境内でマクロファージから免疫抑制細胞への分化を促進するとの新知見を得て論文投稿アクセプトという形で研究結果が形になった。
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今後の研究の推進方策 |
当科は膵癌、膵癌外科治療のhigh volume centerであるが膵癌はもっとも予後の悪い悪性腫瘍の一つであり、術前化学療法後の手術戦略の検討が臨床研究レベルでなされている。当該研究の最終目標は臨床応用であるが、抗GM-CSF抗体を用いてのサイトカイン阻害によるMDSC誘導、T細胞増殖阻害抑制、またMAPKやNF-kB経路のブロックも検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は当初計画した予算をほぼ使用することが可能であった。 免疫染色でのtissue microarraynの準備に予想以上の時間を要し、一部免疫染色用抗体の購入時期が遅延したため少額の余剰金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度も、研究全般を通し、必要となる経費の多くは消耗品(実験動物を含む)に使用される。必要な材料は、主としてタンパクを検出するための各種抗体であり、単価が1~10万円程度である。SEREX法により未知のタンパクが同定され、シークエンスや新たな抗体を作成するために必要な試薬類も本経費に含まれている。他は動物実験に用いるマウス(SCIDマウス)の購入と飼育経費、抗体を主とする研究試薬、細胞培養にかかるガラス製品等が主である。
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