研究課題
研究期間最終年度にあたる今年度の研究では抗癌剤や放射線照射が、癌細胞に対する直接の殺細胞効果以外に、宿主の癌局所免疫環境を修飾し予後に影響を与える可能性があることが明らかになった。このメカニズムとして抗原提示機構であるHLA class I分子の発現低下抑制、CD4,CD8陽性Tリンパ球浸潤の促進や抑制性T細胞(Treg)の浸潤抑制が関与することを切除標本の免疫組織学的解析を行うことによって明らかにした。またこの局所免疫修飾作用は癌種と抗癌剤の組み合わせにより免疫増強にも免疫抑制にもなり得ることも判明した。さらに抗癌剤が膵癌局所の免疫系に与えるメカニズムを解析するために、ヒト膵癌培養細胞を用いた実験系を構築した。in vitroの実験系で、膵癌細胞に対してGemcitabine,5FUを至適濃度で添加共培養したところGM-CSF(顆粒球単球コロニー刺激因子)の発現亢進と共に、ミエロイド細胞からMDSC(Myeloid-derived suppressor cells)への分化促進とT細胞の増殖阻害が生じることが示された。抗GM-CSF抗体を用いて阻害実験を行ったところMDSC誘導、T細胞増殖阻害が抑制され、この活性化にはMAPKやNF-kB経路が関与することが示唆された。さらに68例の膵癌切除切片TMAの免疫組織学的解析によりGM-CSF強発現症例は有意に予後不良で、術前化学療法施行症例では有意にMDSCが増加することが明らかとなった。この他、膵癌間質におけるpalladin発現細胞や、異所性リンパ節の出現が膵癌術前化学療法後の予後良好症例を判断するためのバイオマーカーとなることを解明した。また胆道癌においてPD-L1発現が予後に与える影響や、Epithelial mesenchymal transitiontと局所免疫との相関メカニズムについても解明した。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)
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