研究課題
急性脊髄損傷は、軸索の断裂、神経細胞及びグリア細胞の壊死により脊髄神経組織が破壊される。その機序として、最終的に生じる反応性アストロサイトによるグリア瘢痕が大きな問題となる。そこで中枢神経内の再生阻害因子を克服して良好な機能的再生をさせるためには(1) 軸索の再生能力の修飾 (2) ミエリン内の阻害因子のブロック (3)グリア瘢痕の形成抑制 (4)神経幹細胞などの移植による神経細胞あるいはグリアの補充再生など様々な方法を組み合わせていく必要がある。我々は、グリア瘢痕の形成抑制が神経幹細胞などの移植による神経細胞あるいはグリアの補充再生と同時に必須であり、そのためには、ミクログリアの活性化の抑制が重要である事に注目して、脳内のミクログリアの老化に伴う活性化の抑制、ミクログリア(MG)由来細胞株BV-2細胞に、炎症を引き起こすリポ多糖(LPS)の作用の抑制について研究をしてきた。さらに、組織の阻血による酸性化の影響を検討するため、Asic1aノックアウトマウスを購入、系統維持し、現在、研究している。そして、脳脊髄内の炎症反応の指標として、ミクログリアの単位面積当たりの密度を調査し、「グレリンシグナリングの増強はsirtuin1の活性化により加齢モデルマウスの寿命を延長する」という表題で掲載された(Mol Psychiatry. 2016; 21)。さらに、ミクログリア由来細胞株BV-2細胞をLPS投与によりミクログリアを活性化したところ、刺激誘導型の一酸化窒素(NO)合成酵素iNOSや炎症反応を惹起するサイトカインTNFαのmRNAが増加した。炎症を引き起こすリポ多糖(LPS)と共にSGK阻害剤であるgsk650394を投与したところ、iNOSとTNFαの発現レベルはさらに上昇した。以上の結果は、Biochem Biophys Res Commun. 2016 で報告した。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Mol Psychiatry
巻: 21 ページ: 1613-1623
10.1038/mp.2015.220
Biochem Biophys Res Commun
巻: 478 ページ: 53-9
10.1016/j.bbrc.2016.07.094.