研究課題/領域番号 |
26462404
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
江石 義信 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70151959)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / アクネ菌 / 持続感染 / 新規診断マーカー |
研究実績の概要 |
本年度は当初の計画通り、前立腺生検組織におけるアクネ菌抗体(PAL抗体)による免疫組織学的な解析を行った。解析に用いた症例はMRI, 血清PSA値で異常を指摘され複数回針生検を行い、初回生検が陰性であった症例を用いた。これらの症例から癌群(初回生検から5年間で癌が認められた検体)および、対照群(最終生検を含め、初回生検から3年間、癌が検出されなかった検体)の初回生検材料に対し解析を行った。 解析方法としては、PAL抗体免疫染色によりアクネ菌が陽性となった腺管および陰性であった腺管についてカウントを行いアクネ菌陽性腺管率として評価を行った。また、間質マクロファージについても、アクネ菌陽性細胞数をカウントし解析を行った。その結果、アクネ菌陽性腺管率は対照群に比較して癌群で有意に高いものであった(p=0.0062)。アクネ菌陽性間質マクロファージについては、有意な差は認められなかった。またアクネ菌陽性腺管率についてROC曲線による解析を行ったところ、カットオフ値17.1%、感度55%、特異度94%であった。 さらにアクネ菌陽性腺管率および、血清PSA値などの因子を用いてロジスティック回帰分析を行った。今回用いた症例においてはPSA値のオッズ比は16.5倍であるのに対し、アクネ菌陽性腺管率は血清PSA値を上回る44.8倍と高いものであった。 また、血清PSA値がグレーゾーン(4~10 ng/ml)であった癌群および対照群についてもアクネ菌陽性腺管率の比較解析を行ったところ、癌群が有意に高値を示した(p=0.0073)。 さらに癌群および対照群の最終生検検体(癌を含まないコア)についてもPAL抗体による免疫組織学的解析を行い、初回検体と比較検討した。その結果、癌群、対照群共に初回生検検体と最終生検検体とで差は認められず、同程度のアクネ菌陽性腺管率であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度における研究の進捗としては、おおむね予想していた結果は得られている。現在までに解析が終わっている症例は癌群で22例、対照群で16例となっている。これらの解析結果としては、以前報告した前立腺全摘出材料を用いた結果と比較すると、アクネ菌陽性腺管率のカットオフ値については、生検材料で上昇していた(前立腺全摘出材料での解析;9.77%、生検組織材料;17.1%)。このことは、全摘出材料での解析における対照群は正常組織(膀胱癌合併切除検体)を用いていたが、生検組織における解析では慢性前立腺炎を伴う症例も含まれていたことが原因と考えられる。ロジスティック回帰分析における結果は、全摘出材料においてはアクネ菌陽性腺管率で49倍であり、今回の生検材料での結果と同様の値が得られた。 また初回生検時と最終生検時の結果を比較すると癌群、対照群ともに両者で差は認められず、長期的なアクネ菌の持続感染が発癌に関与していることが想定される。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降に関しては、計画通りアクネ菌による発癌メカニズムについて解析を行っていく予定である。また、本年度に行っていた免疫組織学的解析についても、現時点では症例数が十分ではないため並行して行っていく予定である。 発癌メカニズムの解析については、まずアクネ菌抗体にて認められている菌体が生菌であるかどうかを明らかにする予定である。その後、癌関連遺伝子とアクネ菌との関係性について免疫染色等で確認する。また、アクネ菌感染による前立腺癌の発癌モデルの作成については、長期的な観察を必要とするため優先的に進めていく予定である。
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