我々が行った500例の代表的な癌遺伝子の解析結果では、頭頸部癌の治療方針に影響を与えるような遺伝子発現変化を同定することはできなかった。 TNM分類以外の重要な予後予測因子にはヒト乳頭腫ウイルス(HPV)感染の有無がある。一般に癌は低分化になるほど悪性度が高くなり、それに相関して予後も悪化すると考えられる。しかし低分化のHPV陽性癌の予後が良いのは逆説的である。そこで我々は分化度が低下するにつれて上皮間葉転換が進むことに注目し、上皮系、間葉系のマーカーの発現をそれぞれの群で検討した。その発現にheterogeneityが見られた症例の予後は不良で、HPV陽性ではhomogeneousであった。
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