研究課題
重症心身障がい児(重症児)の胃食道逆流症(GERD)に対する噴門形成術の生理学的及び臨床的意義について、自験データ分析と文献検索により検討した。重症児のGERDに対する一般的術式であるNissen噴門形成術は、食道胃内圧検査結果からtransient LES relaxation(TLESR)時の噴門の開きを不完全とすることによってGERの発生を抑制し、術後再発例ではTLESRの時に術前と同じように噴門が完全に開く状態になっていることから、GERDの抑制のためには噴門が不完全にしか開かない状態を維持し続けなければならないと考えられた。その結果、おくびによって胃内ガスを排出することが困難となるため、呑気によって腸管ガスが貯留しやすい重症児においてガスの排出障害は腸管拡張による腸管運動障害や腸閉塞につながる。文献的には術後に強い嘔気を約1/3の患者にみられるとともにGERD再発も少なくない。噴門形成術は肺炎罹患率や入院回数を下げる効果は認められず、必ずしも重症児のQOLの改善につながっていなかった。漢方薬の六君子湯は重症児で食道酸暴露時間を低下させるとともに胃排出遅延を改善した。文献的には胃の受容性弛緩を高めるとの報告もみられ、胃の生理機能を改善させてGERDをコントロールすると考えられる。GERDの重症児に対する胃瘻造設術は自験例ではGERを減少させ、胃排出遅延を改善した。文献的には中等度のGERD患者では噴門形成術をしないで胃瘻造設術と内科治療で多くの症例は管理できていたことから、生理学的に無理のある噴門形成術よりも胃瘻造設術と六君子湯などを使った内科的治療の併用が低侵襲で効果的と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
データ分析と関連論文の精査などは順調に進んでいる。2015年度の研究成果に基いた重症心身障がい児の胃食道逆流症に対する治療について第106回日本外科学会学術集会にて口演した。
胃食道逆流症の重症心身障がい児の上部消化管motilityの異常を明らかにするために、食道インピーダンスpHモニタリングと胃排出検査結果の関連性などについての更なる詳細な分析を続行する予定である。
研究用器具の購入を中止したため
2016年度の研究消耗品購入や学会出張などに使用する予定
第31回日本静脈経腸栄養学会学術集会特別シンポジウム2 基調講演
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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