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2014 年度 実施状況報告書

関節におけるTRPS1発現制御機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 26462781
研究機関大阪大学

研究代表者

阿部 真土  大阪大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (40448105)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード転写因子 / TRPS1 / エンハンサー / Cre-LoxP / 関節軟骨
研究実績の概要

TRPS1ヒトTrichorhinophalangeal症候群(TRPS)の原因遺伝子として同定されている転写因子である。TRPSの患者は特徴的な顔貌を示すほかに低身長、四肢の骨端部の形態異常、少ない毛髪などの症状を示す。若年性に変形性関節症を発症するなどの報告もある。8割ほどのTRPS患者はTRPS1遺伝子の変異もしくは欠失が見られるが、残りの2割の患者はTRPS1遺伝子に変異などが見られず原因がはっきりしない。この場合TRPS1遺伝子発現の制御に何らかの問題が起こることでTRPS様の症状が出ている可能性がある。本研究計画ではヒトとマウスのTRPS1遺伝子の周囲での相同性の高い領域を見出し、その配列について詳細な解析を開始した。
本年度はマウスTrps1遺伝子転写開始部位の上流配列にCreリコンビナーゼ遺伝子をつないだTrps1-Creマウスの詳細な解析を行った。Trps1-Cre遺伝子を持つF0雄マウスを雌 Creレポーターマウスと交配し胎生11日齢から生後2週令までの仔マウスを回収した。遺伝子型判定ののちCreによる組み換えを起こしている細胞をホールマウント、もしくは切片上で可視化した。
複数のTrps1-Cre雄マウスを得ることができたが、1匹を除きその他すべてのマウスで見られたCre活性は関節軟骨を含む限られた器官に限局していた。申請者がLine1 Trps1-Creと名付けたラインは四肢の近位、遠位ほぼすべての関節軟骨細胞がラべリングされていた。TRPSにおいて手足の指の骨端部の変形が高い頻度で見られることと、Trps1-Cre活性を有していた娘細胞が四肢の関節軟骨にラベルされたことからTrps1-Creマウス作成に使用したゲノムの配列にTrps1の関節軟骨エンハンサーの一部が含まれることを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Trps1-CreマウスとCreレポーターマウスの交配で予定していたすべてのステージ(胎仔期、新生仔期、断乳期)で複数匹得ることができ、ラべリングされる細胞を可視化することができた。この結果からまず、関節軟骨におけるTrps1遺伝子発現を制御する配列の一部が使用した遺伝子断片に入っていることがわかった。また、最も早期で胎生13日齢マウスの関節相当部にラべリングされる細胞が見出され、同一の細胞かは不明であるが、ラべリングされる細胞は断乳期マウスの関節軟骨にも継続して見られることが分かった。これらの結果はTrps1の発現する(もしくは発現した)細胞が関節軟骨の発生、また機能に寄与し続けることを示唆している。TRPSの患者に関節の形態形成異常や若年性の関節疾患が見られることから、エンハンサー活性を有する領域のvivoでの同定は大きな意味がある。今後はこのvivoで同定した領域の配列を培養軟骨細胞を用いて詳細に解析することでTrps1の関節における発現様式を見出していきたいと考えている。最終的にvitroで見出した結果をvivoで確認することで、より生体に近い状態でのTrps1発現制御の理解に近づきたい。

今後の研究の推進方策

今後は同定した遺伝子断片の詳細な解析を行う予定である。この断片の下流にホタルルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだベクターを作製後、軟骨細胞株やその他の細胞株、初代培養軟骨細胞などへ導入し、ルシフェラーゼ活性の違いを調べる。また、この遺伝子断片の欠失バージョンをいくつか作成し、特に軟骨細胞における活性の維持に必要な領域の絞り込みを行っていく。その解析とは別にCRISPR-Cas9システムを応用したenChIP法を用いてエンハンサー配列に結合する因子の同定を開始する。そのための予備実験として軟骨細胞株にFLAG標識した変異型Cas9(dCas9)を発現するためのプラスミドベクターを遺伝子導入し、48時間後の細胞ライセートを調整し、抗FLAG抗体を用いたウェスタンブロットを行ったがdCas9タンパクのバンドを検出することができなかった。今後は遺伝子導入の条件や、核分画を調整するための細胞回収のタイミングなどの条件決めを行っていく必要がある。場合によっては遺伝子導入効率のいい別の軟骨細胞株を選びなおさなければいけないことも考慮に入れている。

次年度使用額が生じた理由

当初より購入を予定していた消耗品を安く購入することができたため、次年度使用額が発生した。

次年度使用額の使用計画

次年度の消耗品として使用する予定でいる。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Kruppel-like factor 4 expression in osteoblasts represses osteoblast-dependent osteoclast maturation.2014

    • 著者名/発表者名
      Fujikawa J,Tanaka M, et al.
    • 雑誌名

      Cell Tissue Res

      巻: 358 ページ: 177-187

    • DOI

      10.1007/s00441-014-1931-8

    • 査読あり
  • [学会発表] 骨芽細胞におけるKLF4の発現は破骨細胞成熟を抑制する2014

    • 著者名/発表者名
      藤川順司、他3名
    • 学会等名
      第56回歯科基礎医学会学術大会・総会
    • 発表場所
      福岡国際会議場
    • 年月日
      2014-09-25 – 2014-09-27
  • [学会発表] 転写抑制因子Trps1の関節軟骨発現制御エンハンサーの探索2014

    • 著者名/発表者名
      竹内優斗、他4名
    • 学会等名
      第56回歯科基礎医学会学術大会・総会
    • 発表場所
      福岡国際会議場
    • 年月日
      2014-09-25 – 2014-09-27
  • [学会発表] KLF4は軟骨細胞でのプロテアーゼの発現を制御する2014

    • 著者名/発表者名
      藤川順司、他3名
    • 学会等名
      第32回日本骨代謝学会学術集会
    • 発表場所
      大阪国際会議場
    • 年月日
      2014-07-24 – 2014-07-26
  • [学会発表] 転写抑制因子Trps1の関節軟骨発現制御エンハンサーの探索2014

    • 著者名/発表者名
      竹内優斗、他3名
    • 学会等名
      第32回日本骨代謝学会学術集会
    • 発表場所
      大阪国際会議場
    • 年月日
      2014-07-24 – 2014-07-26

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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