研究課題/領域番号 |
26462781
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
阿部 真土 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (40448105)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Creリコンビナーゼ / トランスジェニックマウス / TRPS1 / エンハンサー |
研究実績の概要 |
Trps1遺伝子上流配列の制御下にCreリコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウス(Trps1-Creマウス)とCreレポーターマウスを交配し、Trps1遺伝子を発現している、もしくはしていた細胞(Trps1娘細胞)を可視化した。その結果、関節軟骨のみならず、毛乳頭にもTrps1娘細胞が分布していることを見出した。これらの部位はTrps1の内因性の発現を認める組織であり、トランスジェニックマウスの作製に使用したTrps1上流の遺伝子断片が組織特異的エンハンサーの一部を有することが確認できた。さらにTrps1の娘細胞は発生中の心臓の広い範囲に認められた。心臓におけるTrps1の発現は今まで報告されていないことから胎生期マウス心臓でTrps1の遺伝子発現を調べたところ、きわめて限局して発現することを見出した。Trps1遺伝子の発現部位はTrps1娘細胞の見られる範囲と比べ、圧倒的に限局していた。最近、Tricho-rhino-phalangeal症候群(TRPS)の患者で比較的高い頻度で先天性心奇形が見られることが報告された。TRPSの患者に見られる心奇形はTrps1の発現を確認できた部位のみならず、非常に多彩な様式をとる。今回、Trps1娘細胞が発生中の心臓の広範囲に分布していたことは、TRPSで見られる広汎な心奇形とTRPS1の限局した発現の矛盾を解消しうる結果であると思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Trps1遺伝子上流の配列を用いたTrps1-CreマウスとCreレポーターマウスとの交配によるTrps1娘細胞の局在は胎生期から生後までほぼ解析を終了した。その結果、使用したTrps1遺伝子上流の断片が組織特異的エンハンサーを含んでいることが分かった。さらに、今まで全く見当がされていなかったTrps1の心臓における発現を見出し、その発現とTrps1娘細胞との局在の大きな違いからTRPSの患者に見られる広汎な心奇形の病因との関連を示唆する結果を得ることができた。つまり、Trps1の発生中の心臓における発現は、endocardial cushionに限局して見られ、胎生後期には弁に発現が見られた。組織切片における遺伝子発現解析の結果は、組織から抽出したRNAを用いたリアルタイムPCR法においても示すことができた。 変異型Cas9(dCas9)を用いたenChIPはFLAG-dCas9の発現レトロウイルスの調整がうまくいかず、滞っていた。発現クローンの導入の方法を変更し、継続して行っている。
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今後の研究の推進方策 |
変異型Cas9(dCas9)を利用したenChIPはFLAG-dCas9レトロウイルスの十分な発現が得られず、いったん滞っていたが、FLAG-dCas9の発現プラスミドのエレクトロポレーション法による細胞への導入で問題は解決しつつある。次年度はenChIPの実験系を稼働させるために全精力を注ぐ。つまり、FLAG-dCas9の十分な発現が見られる遺伝子導入の条件を検討するため、免疫沈降後のタンパク発現解析を継続して行う。
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備考 |
大阪大学大学院歯学研究科 口腔解剖学第一教室ホームページ http://web.dent.osaka-u.ac.jp/~oa1/
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