研究課題/領域番号 |
26462902
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
吉田 隆一 朝日大学, 歯学部, 教授 (80102127)
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研究分担者 |
土井 豊 朝日大学, 歯学部, 名誉教授 (40116067)
近藤 信夫 朝日大学, 歯学部, 教授 (40202072)
川木 晴美 朝日大学, 歯学部, 講師 (70513670)
河野 哲 朝日大学, 歯学部, 准教授 (80340074)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 直接覆髄 / リン酸カルシウムセメント / 歯髄由来幹細胞 |
研究実績の概要 |
本年度は①直接覆髄薬作製のための練和液の選定、②覆髄セメント存在下での歯髄由来幹細胞の動態解析と、①②の結果から次年度に予定していた③試作セメントを用いた覆髄実験を前倒しで行い、以下の結果を得た。 ① 直接覆髄薬作製のための練和液の選定のため、4種のリン酸系水溶液を用いてα-リン酸三カルシウム/リン酸四カルシウム(α-TCP/Te-CP)粉末を練和し、操作性、pH変動を検討した結果、1Mリン酸二水素ナトリウム水溶液、2Mリン酸二水素ナトリウム水溶液、1Mクエン酸の水溶液を選定した。 ② 覆髄セメント存在下での歯髄由来幹細胞の動態解析として、覆髄セメントのヒト歯髄由来幹細胞(hDPSC)に対する細胞毒性評価と覆髄セメント存在下でのhDPSCの増殖について検討した。検討の方法として、覆髄後のセメントの歯髄組織への作用を想定して、練和直後のセメントを培養液に浸漬し、溶出する成分の細胞毒性と細胞増殖におよぼす影響を検討した結果、α-TCP/Te-CPセメントの溶出成分は比較対照とした水酸化Caセメントからの溶出成分が顕著な細胞毒性を示し、細胞増殖を阻害したのに対し、ほとんど細胞毒性を示さず、細胞増殖を阻害しないことが明らかとなった。 ③ ①②の結果から、平成27年度に予定していた試作セメントを用いた覆髄実験による評価を前倒しで行い、ラット露髄モデルを作製して、試作セメントおよび水酸化Caセメントにて直接覆髄を行い、覆髄後7日の組織応答について解析した。その結果、水酸化Caセメント覆髄群ではセメント直下に壊死層がみられ、多数のTUNEL陽性細胞が検出されたのに対し、3種のα-TCP/Te-CPセメント覆髄群ではTUNEL陽性細胞は少なく、歯髄組織の増殖がみられるものもあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試作セメントの物性評価と、細胞培養系での評価結果から、次年度に予定していた動物モデルでの覆髄後の組織評価を並行して行うことで、効率よくセメント作製条件の絞り込みを進めることができたため。 本年度の計画に次年度以降の動物実験を加えたことで、練和液の条件に依存した細胞の応答性や歯髄組織応答性の違いが明らかとなった。また、動物実験から、α-TCP/Te-CPセメントは既存の水酸化Ca製剤よりも歯髄組織に対して為害性を示さず、生体親和性に優れた特性を持つことが示された。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、歯髄由来幹細胞培養系によるセメントの評価と、ラット露髄モデルへの直接覆髄後組織の解析を行う。なお、動物実験については既に経時的な直接覆髄モデルの作製を行っており、組織解析を進めてタイムポイントの追加等、最終年度の計画をスムーズに行えるよう、基礎的知見の集積を行う。
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