研究課題/領域番号 |
26462907
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研究機関 | 九州保健福祉大学 |
研究代表者 |
中村 真理子 九州保健福祉大学, 保健科学部, 教授 (90284067)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リン酸化プルラン / 可視光硬化型ゼラチン |
研究実績の概要 |
我々は幹細胞や薬剤を担体として可視光で硬化する光反応性ゼラチンや多糖誘導体リン酸化プルランを用いた口腔ケア用品,接着性人工骨など様々な材料を開発し,実用化に取り組んできた。本研究ではこれまでのノウハウを基に,感染を防御し,硬組織を再生する従来にない薬剤徐放型歯内療法システムを開発し実用化につなげることを目指している。今年度は可視光硬化ゼラチン,リン酸化プルランの直接覆髄材・根管充填材としての機能評価を行った。 1.ナガセケムテックス(株)ならびにナガセ医薬品(株)が製造したリン酸化プルランに含有されるエンドトキシン量の測定を行った。その結果1%濃度で1EU/mLのエンドトキシンが含有されていることが確認された。 2.雌NZ白色家兎の大腿骨部に骨孔を作製し,チタン合金インプラントを埋入した。インプラントはコーティングなしのもの,リン酸化プルランでコーティングしたもの,リン酸化プルラン+αーTCPでコーティングしたもの3群とし,それぞれの押し抜き力学強度試験結果を比較した。また組織学的評価によりインプラント表面への新生骨の侵入について検討した。その結果,押し抜力学試験ではリン酸化プルラン+αーTCP群の押し抜き強度がコントロール群,リン酸化プルラン群に比較して高かった。組織学的評価においても同様にリン酸化プルラン+αーTCP群においてインプラント周囲に多く新生骨を認め,インプラントと新生骨間の接触面積も大きかった。この結果,リン酸化プルランはインプラントをコーティングする基材として有用であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では直接覆髄,根尖性歯周炎に有効な感染防御機能と従来にない薬剤徐放型歯内療養システムを開発することを目的としている。本年度は根管充填材に求められる性質すなわち,炎症を精密にコントロールするための内毒素エンドトキシンの含有量ならびにチタンインプラントコーティングする基材として適切であるかどうかの確認を行った。その結果リン酸化プルランに含有されるエンドトキシンの量は1%濃度溶液で1EU/mLであることが確認された。またリン酸化プルランでコーティングしたチタンインプラントは優れた骨伝導性が期待できることが確認された。根管治療後に抜歯となる症例の大半は補綴物との封鎖性に問題があると報告されているが,今回の結果からリン酸化プルランにより根管充填を行うことで補綴物との封鎖性が向上することが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では以下の項目に従い研究を進めることにより直接覆髄,根尖性歯周炎に有効な感染防御機能と従来にない薬剤徐放性歯内療法システムを開発することを目的をしている。すなわち(1)材料(可視光硬化型ゼラチンならびにリン酸化プルラン)の調整ならびに最適化(2)直接覆髄としての機能評価(3)根管充填材としての機能評価である。平成26年度は(1)材料の調整ならびに最適化については一定の評価を得ることができたが引き続きこの項目については実験を継続していく予定である。平成27年度はリン酸プルランならびに可視光硬化型ゼラチンの直接覆髄材,根管充填材としての機能評価につき実験を開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,調整した試料の分析等のための機器使用料を計上していたが機器使用料が発生しなかったため,次年度繰越となった。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越金は試薬類,器具類に加える予定である。
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