研究課題
本研究では、粒子法を用い咬合時の負荷によるインプラント頚部周囲組織の形態変化およびマイクロムーブメントによる組織液の拡散をシミュレーションすることで、インプラント頚部の骨吸収の機序を明らかにし、新たな知見を得ることを目的としている。本年度は下記の研究を行った。CADソフトウェア(SolidWorks2016、SolidWorks)を用いて、直径 4.0 mm 長さ 13.0 mmのNobel Biocare社製 Branemarkエクスターナルコネクション型を模したインプラント体、アバットメントスクリューおよびアバットメントを作成した。シミュレーションに際しては計算コストがかかるため、プラットフォーム部のデータのみを使用した。そして粒子法解析ソフト(ParticleWorks 5.2、構造計画研究所)に作成したCADデータをインポートし、咬合によるマイクロムーブメントを想定した解析を行った。マイクロムーブメントに関しては、マイクロギャップの距離を 70 μm、粒子間距離を 0.045 mm 、マイクロギャップ発生部位と反対側のプラットフォーム辺縁を中心とした回転運動として解析を行った。その結果、インプラント体とアバットメントのマイクロギャップが縮小し、その間隙が狭くなるにしたがい、インプラント体とアバットメントの間に介在していた組織液がマイクロギャップ部から排出され、マイクロギャップ部周囲に拡散されるのが確認できた。本研究結果より、簡易的ではあるが、インプラント頚部における組織液の動きをシミュレーションし、可視化できる可能性が示唆された。