研究課題
北海道大学病院高次口腔医療センターでは、言語と顎発育を充足させるとともに手術侵襲をより低減化させることをめざして、骨露出創をほとんどつくらない一期的な口蓋形成手術法と副障害を最小限とする下顎外側皮質骨を用いた顎裂骨移植手術法で構成された従来にはない治療体系を考案し、本体系を実践して言語や顎発育を評価し得る年齢に達した症例が蓄積されてきた。有効性の統計学的検証に適う有意水準・検出力を持ち得る例数となったことから、治療体系を異にする国内有数の2施設との間で多施設比較研究を実施し、より普遍的で有効な治療体系の確立をめざす。対象は、当センターにおいて2006年以降、新たに考案された一期的口蓋形成術と下顎外側皮質骨を用いた顎裂骨移植術を組み込んだプロトコールに基づき治療された片側口唇顎口蓋裂で、完全裂、正期産、合併症無し、連続治療例の選択基準を満たす症例とした。対照は、同時期に大阪母子保健総合医療センターにて早期二段階口蓋形成手術法、ならびに新潟大学口蓋裂診療班にて二段階口蓋形成術で治療された連続症例とした。平成26、27年度は各施設での追加症例の蓄積を待ち、5歳時の歯列石膏模型から平行を作製、平成28年度には評価法として簡便かつ高い再現性をもち手術方法や術者の熟練度などの影響を評価でき、異なる治療手法間や施設間比較を行う国際標準となっている5-year old index(Atackら1997), Huddart/Bodenham index(Huddart & Bodenham 1972)の2つの評価法で、第3者を交えた複数の評価者が一同に会して、盲検下での評価を実施しデータを解析中である。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題で平成26年度に本学病院自主臨床研究審査委員会において研究承認(No014-0201)を受けて着手し、平成27年度は共同施設との打ち合わせや新潟大学大学院医歯学総合研究科、大阪母子保健総合医療センターでの自主臨床研究申請が承認され、研究資料の調整をはかった。平成28年度には研究者分担者の平野吉子が退職のため同施設の上松節子に変更した。調整完了された資料を本学に集積して研究分担者も一同に会して、5-year old indexとHuddart/Bodenham indexによる模型評価を施行することができた。
当センターの一期的な口蓋形成手術法と下顎外側皮質骨を用いた顎裂骨移植手術法を組み込んだプロトコールによる治療法、大阪母子保健総合医療センターの早期二段階口蓋形成手術法、ならびに新潟大学口蓋裂診療班の二段階口蓋形成術法の3群の5-year old indexとHuddart/Bodenham indexによる模型評価の結果を解析する予定である。
次年度使用額75727円は分担者への配分額で、分担者の今井智子、高木律男が経費節約を行ったため。
経費節約で生じた未使用金額、分担者の今井智子66645円、高木律男9082円はそれぞれ旅費、物品費に使用する。
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千葉県歯科医学会誌
巻: 6 ページ: 23-25