研究課題/領域番号 |
26463257
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
林 省吾 東京医科大学, 医学部, 准教授 (60349496)
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研究分担者 |
伊藤 正裕 東京医科大学, 医学部, 教授 (00232471)
藤井 徹也 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 教授 (50275153)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 解剖学実習 / 見学型教育 / コメディカル教育 / 人体解剖モデル |
研究実績の概要 |
看護教育の一環として解剖見学実習を行っている学校は多いが,「身体の正常な構造を明らかにするための解剖は,医学に関する大学において行う」ことが死体解剖保存法で規定されている。また,同法において,死体の解剖は死体解剖資格者または「医学に関する大学の解剖学,病理学又は法医学の教授又は准教授が行う」こととされている。したがって,見学を実施するには,看護教育と医学教育の連携が必須である。さらに,現在行われている見学実習は,主に医学生・歯学生が,解剖実習中のご遺体を,医学部の教員の指導のもとに観察する形式が主流である。このため,その実習段階によって観察できる部位や状態は異なる。 人体標本を有効に固定,保存し,見学実習に活用することは,観察可能な部位や時期を広げるという点で,有効と考えられる。本年度は,saturated salt solution(SSS)法による全身の人体解剖モデル1体を作製し,実際の見学実習に活用した。現時点で作製開始から約1年が経過し,半年以上(2015年9月~)見学実習に用いたが,腐敗やカビの発生は認めていない。このモデルは,従来のホルマリン固定に比べて生体に近い質感を長期間保持したため,1)筋・関節を他動的に運動させる,2)横隔膜を下制し,呼吸運動を再現するなどの操作が学生にも可能であった。また,内臓が柔らかく可動性があるため,内臓を原位置に置いたままで,漿膜腔(胸膜腔・腹膜腔)全体を眼と手で確認できた。一方で,臓器の配置や位置は,従来のホルマリン固定遺体の方が安定しており,両者を併用して見学実習を行うことが有用と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SSS法固定遺体による人体標本モデルの作製は,当初想定されておらず,昨年度時点で当初の計画以上の進展が得られたと言えるが,今年度は,実際に看護学修に同モデルを活用することで,その教育効果を確認することができた。一方で,見学実施校に対するアンケート調査などの,カリキュラムの改善に関する調査には,やや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
SSS法固定遺体による人体標本モデルの解剖見学実習への活用を,学会発表や論文により報告する。 新たに分担研究者2名に参加を依頼し,広く見学型カリキュラム改善のための知見を集める。特に,新規分担研究者の1名は,看護の分野で制度化が進められているナース・プラクティショナー(NP)養成(修士相当)における,全国的な解剖学教育をどのようにするかについての検討にも関わっていることから,卒後教育における解剖見学も新たに検討の対象とし,看護教育全体における解剖見学のモデル構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度実施予定であった見学実施校に対するアンケート調査等を,次年度実施としたため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記を実施するとともに,その成果発表を行う。
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