28年度は、前年度の継続として、地域で生活しながらA病院の外来患者(統合失調症)5名に、MCT+(メタ認知トレーニング個人用)を実施した。実施後3名の協力を得て、面接を行った。さらに現在、B病院の外来患者2名にMCT+を実施中であり、実施後の面接で得られたデータを総合して分析し、認知行動療法に関連した学会で報告する予定である。 また、26~27年度にデイケア通所中のメンバー19名を対象者としたMCT実施後の面接を分析した研究は、8th World Congress of Behavioural and Cognitive Therapies (豪:メルボルン6月22-25日)と、第16回認知療法学会(名古屋11月23-25日)で発表を行った。 また、MCT(メタ認知トレーニング 集団用)の普及を目的として、進め方や期待できる効果等について、精神科看護師を主な対象者として3回セミナーを開催した。これらのセミナーへの反響は大きく、実施する側の負担が少なく、楽しみながら、手軽に実施ができるMCTの利便性とその効果について多くの注目を集めた。 研究期間全体の成果をまとめると、MCTの実施によって、統合失調症患者の出来事に対する認知バイアスが改善される可能性があること、および、物事や他者への認知に多様性を生じ、自分の感情や行動を客観的に振り返る機会になることが明らかになった。また、一般的に困難とされる統合失調症患者への集団的介入が可能であることが推測された。これらのことは、MCTおよびMCT+が地域で生活をする統合失調症患者の再発を予防する有効なアプローチの一つであるという根拠を示すものであり、今後さらなるMCTの実施と検証が必要であると考えられた。
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