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2015 年度 実施状況報告書

生活習慣病改善作用を有する難吸収性食品因子の新規作用機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26500003
研究機関東京農工大学

研究代表者

三浦 豊  東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10219595)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードスフィンゴミエリン / 難吸収性 / エキソソーム / 腸管透過性 / アスパラチン
研究実績の概要

前年度にスフィンゴミエリンの腸管透過性に対する作用を明らかにしている。今年度も検討を継続し、スフィンゴミエリンを小腸上皮細胞のモデルであるCaco-2細胞に添加し、その影響を検討した。その結果、スフィンゴミエリンの添加により、膜電位が有意に低下し、透過性の指標となる蛍光物質の透過量が有意に増加するという結果が得られ、スフィンゴミエリンが腸管透過性を有意に亢進させることが明らかとなった。さらにスフィンゴミエリンミセルを形成させ、その中に蛍光物質を含有させた状態で、透過性を検討したところ、ミセル化していない群に比べて、その透過量が有意に増加することも明らかとなった。以上の結果はスフィンゴミエリンが腸管透過性を変化させ、腸内に存在している食品因子や生理活性物質の作用を高めることで生体に影響する可能性を示唆したものであり、最終年にさらに詳細を検討する予定である。なおスフィンゴミエリンの作用機構を検討するためにタイトジャンクション構成タンパク質の一つであるオクルーディンの発現量を測定したが、変化は観察されなかった。またアスパラチンの腸管透過性を評価する系を立ち上げ、アスパラチンの透過性が低いことを確認し、その透過性に対するスフィンゴミエリンおよびそのミセルの影響を検討している。
さらに研究計画書に記載のスフィンゴミエリンがエキソソームを介してその生理作用を発揮している可能性について検討し、スフィンゴミエリンを経口投与したラット血清より調製したエキソソームが筋肉細胞のグルコース取り込み能を亢進すること、その作用はエキソソームの細胞への取り込みを阻害するアネキシンにより阻害されることを見出した。この結果は食事由来のスフィンゴミエリンが腸管でのエキソソーム分泌に影響し、その生理作用を発揮しているという本研究の仮説を支持するものであり、最終年度にはその詳細をさらに検討する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前年度はスフィンゴミエリンに関する検討が先行し、アスパラチンに関する検討が遅れていた。またその検討も細胞培養系を用いたものが中心となり、当初の目的である動物を用いた検討に着手することができなかったが、今年度はアスパラチンに関する検討を開始し、一定の成果を得ることができたことに加え、スフィンゴミエリンを経口投与した際、血中エキソソームの生理作用が変化することを見出し、本研究の当初の目的である「腸管から吸収されにくい食品因子が生理作用を発揮する新たな機構を見出す」という課題に回答を与える可能性がある成果の端緒を見出すことに成功したので、順調に進行していると判断した。また前年度からの継続であるスフィンゴミエリンの腸管上皮透過性に対する検討も順調に進行しており、さらにスフィンゴミエリンを利用して吸収性の低い食品因子を効率よく体内に取り込ませるという新たな手法の開発につながる成果を得ることにも成功しているため、このように判断した。

今後の研究の推進方策

最終年度にはスフィンゴミエリンを経口投与した際の血中エキソソームの詳細な解析を行う。具体的には調製したエキソソームからその構成タンパク質を調製し、対照群(スフィンゴミエリンを投与していない群)から同様に調製したものと比較し、含有量に差が見られたバンドを切り出し、LC-MS/MSにより、スフィンゴミエリン投与が影響したタンパク質の同定を行い、エキソソームを介したスフィンゴミエリンの生理作用の詳細を明らかにする。またスフィンゴミエリンが影響したエキソソームが腸管由来のものである可能性を検討するため、スフィンゴミエリン投与後の門脈血を採取し、その血清から調製したエキソソームの生理作用を検討する。またCaco-2細胞にスフィンゴミエリンを添加した際の馴らし培地よりエキソソームを調製し、その作用を検討することも計画している。
またアスパラチンに関しては、その腸管透過性に対する影響を検討すると同時に、スフィンゴミエリンと同時に添加した際のアスパラチン自身の透過性の変化に関する検討も行い、今年度に見出されたスフィンゴミエリンを利用した食品因子の効率的な体内への送達の可能性に関する検討も実施する。

次年度使用額が生じた理由

年度末に開催される学会への旅費としての支出を予定していたが、指導学生1名が発表を取りやめたため、旅費相当額が残ることとなった。

次年度使用額の使用計画

今年度の経費で次年度への繰り越しとなった金額は比較的少額であり、上記に記載した最終年度の検討で消耗品代として使用することを計画している。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Agricultural Research Council/Medical Research Council(南アフリカ)

    • 国名
      南アフリカ
    • 外国機関名
      Agricultural Research Council/Medical Research Council
  • [雑誌論文] Potential of rooibos, its major flavonoid C-glucosides and Z-2-(β-D-gluco- pyranoloxy)-3-phenylpropenoic acid in prevention of metabolic syndrome.2016

    • 著者名/発表者名
      Muller, C.J.F., Malherbe, C.J., Chellan, N., Yagasaki, K., Miura, Y., and Joubert, E.
    • 雑誌名

      Critical Reviews in Food Science and Nutrition

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Human nucleolar protein Nop52 (RRP1/NNP-1) is involved in site 2 cleavage in internal transcribed spacer 1 of pre-rRNAs at early stages of ribosome biogenesis.2015

    • 著者名/発表者名
      Yoshikawa H, Ishikawa H, Izumikawa K, Miura Y, Hayano T, Isobe T, Simpson RJ, Takahashi N.
    • 雑誌名

      Nucleic Acids Res.

      巻: 43 ページ: 5524-5536

    • DOI

      10.1093/nar/gkv470.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Screening of anti-diabetic food factors using cell cultures and animal models.2015

    • 著者名/発表者名
      Miura Y. and Yagasaki K.
    • 学会等名
      2nd Joint International Symposium on Animal Cell Technology for Asian Network-by JAACT, TCELS and MU- “Biologics and Foods: Trend in Technology, Regulation and Safety”
    • 発表場所
      Mahidol University, Thailand
    • 年月日
      2015-11-18 – 2015-11-19
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2017-01-06  

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