【肺がん患者のエネルギー代謝と栄養病態】 2014年6月以後に滋賀医科大学附属病院にて治療された肺がん患者26名(男性20名、女性6名、年齢68±11歳)を対象とした。手術や化学療法前にエネルギー代謝測定、生化学検査、炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-α)、レプチン、グレリンの測定を行った。安静時エネルギー消費量(REE)、呼吸商(RQ)は間接熱量計を用いて測定し、健常人15名(男性9名、女性6名、年齢51±18歳)とも比較検討した。その結果、肺がん患者では健常人と比較し、REE/基礎エネルギー消費量(BEE)は有意に高値であった。RQは有意に低値を示し、脂質の燃焼が亢進していた。また病期が進行するにつれてREE/BEEは亢進する傾向にあり、REE/BW、REE/BEEとIL-6、TNF-αとの間には正の相関を、半年間の体重変化率とは負の相関を認めた。一方、BMIが高いほどレプチン値は有意に高く、活性グレリンは低い傾向にあった。この結果から、肺がん患者では病期が進行するにつれエネルギー代謝が亢進し、これには炎症性サイトカインの関与が示唆された。 【消化器がん患者のエネルギー代謝と栄養病態】 2014年7月以降の消化器がん入院患者のうち、代謝に影響のある併存疾患を有する者を除き37例(食道癌11例、胃癌12例、膵臓癌5例、大腸癌9例)を対象とした。検討項目は肺がんの研究と同様である。その結果、StageⅣの患者において高度の栄養不良を有する割合が大きく、喫食量が低下していた。REE/体重、REE/除脂肪組織量は健常人とほぼ同等であったが、病期の進行に伴いREE/BW、REE/FFMが高値を示した。また、血液中のIL-6濃度、TNF-α濃度は、StageⅣ期で有意に高値であり、エネルギー代謝の変化に炎症性サイトカインが関与することが明らかとなった。
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