先行研究より居住環境が育児期の女性の身体的・精神的健康状態に影響を与えていることは示唆されている。しかし、影響を与える要因にまで踏み込んだ研究は少なく、また客観的健康状態との関連性に留まっている。1次調査では、部屋数など空間の広さが健康状態に影響を与えている結果となった。特に部屋数は多くなるほど精神的健康状態に悪い影響を与えていた。家事や子育てに起因した動線の長さが影響を与えていると仮設し、家庭内での活動量を測定し、育児期の女性の自覚的健康状態や居住環境との関連性を検証する目的で本研究を実施した。産後1か月の女性に活動量計を3日間装着、GHQ28精神健康調査票の記入、生活活動表記入(一日の活動内容を記載)、居住環境に対するアンケート記入を依頼し、100名よりデータを得た。その結果、居住空間の広さは健康状態を悪化させ、住まいの満足度、特に同居者との人間関係(夫婦関係)や利便性の良さは健康に良い影響を与えており、1次調査を指示する結果となった。また、居住空間の広い持ち家戸建、持家集合住宅の活動量は多く、住居面積に比例して活動量が多くなった。しかし、空間の広さに関連した生活活動量が精神健康状態には影響を与えておらず、活動量の多さが精神的ストレスにはなっていない結果となった。空間の広さは一般的認識において人を健康に導くと考えられているが本研究においても否定的な結果となった。女性特有の人に対する親和性が関連しているとも考えられ、次回の研究につなげていく必要があると考える。
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