研究実績の概要 |
下水管内での大容量無線ビデオ伝送の可能性を探るため、ISM帯の無線LAN機器(920MHz, 2.4GHz, および5GHz帯)と直径200mmの実験用下水管を用いた無線通信実験、並びにシミュレーションを行い、このサイズの下水管内での無線通信は、自由空間での伝送可能距離が長い周波数が低い場合ものではなく、より周波数が高い場合の方が通信可能距離が長くできることを確かめた。具体的には5GHz帯の無線LAN 801.11aを国内で使用可能な10dBm/MHzの出力で用いた場合、無指向性アンテナ使用時に8mまでの通信が可能であることが確かめられた。また、指向性アンテナを使用する場合には、同一の出力でも下水管内でも通信距離を延長できることを実験的に確かめた。 当初の計画では、複数の観測ノードが撮影映像をマルチホップで転送し、アクセスポイントに転送するプロトコルを開発するとしたが、下水管内での現実的な通信可能距離に鑑みて、各ノードが平行して下水管内を撮影し、蓄積した映像データをアクセスポイント(AP)との限られた通信可能時間に転送するように戦略を変更し、これに基づいて、複数の観測ノードが互いに干渉を防いで、重複する箇所の映像の転送を防ぎつつ、短時間で確実に映像データをAPへ転送するプロトコルを設計した。 直径15cmの球形の筐体にカメラ、照明を組み込んだ観測ノードのプロトタイプを設計した。光反射の軽減、二重カプセル構造による下水管内移動時のカメラの姿勢維持を可能とする工夫を盛り込んだ。これを用いて実験用下水管内で浮流移動と撮影を行う実験を行い、管内の視認性向上にあたって適切な照明方法と、画像補正の必要性に関する知見を得た。また、カメラの回転移動による動画造の回転を補償する動画加工手法を開発し、撮影映像の目視検査においては、許容できる程度の品質での補正が可能であることを確かめた。
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