研究課題/領域番号 |
26540189
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
飯田 弘之 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (80281723)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 詰め問題 / パズル創作 / 美観 / 証明数探索 / 共謀数探索 |
研究実績の概要 |
ゲームやパズルの美観評価は,エンターテイメント性や芸術性などの評価と関連して近年注目される分野となっている。例えば,Iqbal(2006)はチェスプロブレムを題材としてエキスパートによる感性評価を試みた。これは詰め将棋での感性評価(小山 1994)の延長と言えよう。チェスでは,プロブレムだけでなく,チェスそのものの美観を評価しようという試みがある。Osborne(1964)は知的な美しさとチェスの美観を様々な角度から比較した。一方,Ravilious(1994)はチェスとプロブレムの美観についてより統計的な観点から調査した。 研究代表者のアプローチでは,対象問題に対して生成されるAND/OR木探索で得られる証明数の値を用い定量的な評価を試みた。創作の段階でその値の変化を有用な情報として用いることで優れた作品を創作した。証明数の最大値は作品の美観評価の有効なファクターとなり得ることから,初形のバランス感覚などの評価ファクターを加えることで,エキスパート同様の評価の高い作品を創作した。 また,詰め問題を将棋の最終盤の一部ととらえ,棋譜の美観の担保という観点から,投了時期判断の指標としての応用を検討した。名人レベルになったとされるコンピュータ将棋であるが,いまだに適切な投了時機が判断できない。本研究の成果の一部として適切な投了時期の判断の指標となり得るかどうかを調査した。 さらに,ミニマックス木に現れる共謀数の推移を分析することで,戦略の変化を要請されるような重要局面(critical position)を定義した。パズルの芸術性とゲームの美観という一見異なる対象物について共有できる性質を見出した。その成果の一つとして,当該分野で著名な証明数探索をDeepPNとしてより精密化することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
AND/OR木探索における証明数とミニマックス木探索における共謀数の関係について急速に理解を深めることができたことによる。当該分野における本研究の重要性とアプローチの合理性が評価され、オランダ・ライデン大学のJaap van den Herik教授のグループから共同研究のご提案をいただき、当初の予想以上に飛躍的に発展させることができたことが背景にある。
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今後の研究の推進方策 |
AND/OR木探索における証明数とミニマックス木探索における共謀数の関係,そしてそれらが意味することについての理解が深まり、ゲームやパズルを題材とした実践的な応用が期待される場面に至っている。予備的な実験から得られた知見として、人間エキスパートらの評価と整合性のとれる評価量を求める方向での研究は難航することが予想される。証明数探索や共謀数探索のプロセスで数多くのタイブレークを要するケースが生じるが、この現象にも注目することで次の大きな成果へとつながると期待している。
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