本申請課題では、東日本大震災によって重油汚染が生じた宮城県気仙沼湾の海洋生態系を対象に、重油由来でかつ毒性の高い多環芳香族炭化水素(PAHs)が海洋生態系にどのような集団遺伝学的影響をもたらしたかについて調査した。気仙沼湾の海底堆積物の菌叢を解析した結果、石油耐性・分解菌と考えられるRhodococcus(R)属は、PAHs濃度が高い地点に多く分布していた。一方、2011年からR属の数は経年的に減少傾向にあった。このことから、震災による重油汚染が著しい時期に重油を分解できるR属が集合、あるいは他の菌が淘汰された後、時間と共に重油が分解・減少した結果、R属自身も減少していったことが示唆された。
|