熱帯雨林の保護は、生物多様性保全や炭素隔離機能等の地球環境問題として注目を集めているが、地域住民にとってはさまざまな生活資源の供給源として人間の安全保証の面からも重要である。こうした重要性にもとづき、森林の保護と持続的利用を両立させる手段として非木材森林資源(Non-timber Forest Products=NTFPs)の利用が関心を集めている。NTFPs利用に関わる最大の課題のひとつは、資源をめぐる住民相互の競合関係を調整し、資源の乱獲を防ぐことである。本計画では、地域住民と共同してparticipatory mapping(参加型地図作成)の手法によりながら、資源をめぐる社会的調整のための基礎調査を実施した。 (1)主要なNTFPである果実種について、植生調査及びGPSによる樹木個体の分布記録から樹種ごとの資源分布図を作成した。 (2)住民の協力を得て、上記の資源の採取場をGPSによって記録し、その結果をGISによって地図化した。また、狩猟については、住民による罠猟の猟場についてGPSを利用して記録し、地図化した。 (3)以上の結果、現金収入源として重要な植物性NTFP種(Irvingia gabonensis)の採取場所や野生動物を対象とした罠猟の猟場については、村落間及び村落内の家族集団間で利用場所の使い分けが認められることが判明した。 (3)地域住民を対象とするワークショップを開催して上記の調査結果を提示し、資源利用空間の使い分けと重複状況についての認識を共有した。また、資源をめぐる過度な競合をさけるための調整方法について討議した。
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