本研究ではコミュニケーションしやすいインターフェースデザインのために人工物から人の存在を感じるための必要要件を探索し、人のように感じられるインターフェースのための設計指針を構築することを目指した。具体的な研究項目は1)各感覚における人の存在感を与える情報の同定、2)人の存在感に対する異種感覚情報統合の効果検証、3)人と感じられるインターフェースデザインの社会に及ぼす影響の調査である。 本年度は、ユーザーが人の姿をしたインターフェースを介して見知らぬ相手とコミュニケーションした際に、そのようなインターフェースが両者の人間関係にどのような影響を与えうるかを確認するために1ヶ月程度の長期的効果の予備的検証を行った。その結果、通常の携帯電話で通話を繰り返して貰ったグループに比べ、人の形をしたやわらかい通話器で通話を繰り返したグループの方が、自己開示が増えることが分かった。また、インターフェースが人の形をしたやわらかい筐体であると、ユーザーから頭部や腕などを撫でるといった動作を引き出すこと。指差しやジェスチャーといった人と対面しているときに行うような動作が現れることが分かり、腕や頭、顔といった人としての身体的特徴や柔らかさが遠隔コミュニケーションをより豊かにし、通話相手との親しい人間関係を構築するのに有効であることが示唆された。 また、その結果を踏まえ、より人らしさを削ぎ落としたインターフェースを開発し、人らしさの最小要素のさらなる探索と社会実装についての調査を進めた。
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