日本をはじめ全世界では、iPS 細胞を用いた新しい再生医療の実現に向けて研究がスタートした。文部科学省では実用化に向けたロードマップが作成され、現在、医療技術開発を中心に大きく進み出している。この新しい医療社会を真に理解して自分自身の医療として受け止める必要がある。そこで、本研究では「学校での教育」という側面から次世代再生医療の実現に向けた国民の QOL 向上を目指した。保健という視点から学校での教育のポイントを明確化して教育内容の提言を行い、先行している医学面での基礎研究および臨床研究に加え、教育面でのサポートによって新しい再生医療に向けた国民の社会的意識基盤を作ることを目的とした。2015 年度は高大連接続も見据え,計画的・継続的な教育プログラムを試行した。すなわち、[1] 高大接続研究「再生医療教育講座 私たちの考える未来の再生医療社会 科学は社会の一員である」の実施,[2] 毎月の再生医療通信「懸け橋」の発行、[3] 京都大学で毎年開催されてきた高校生対象「京都大学 iCeMS/CiRA クラスルーム 幹細胞研究やってみよう!まずは観察から 」を本学で実施した。特に、[1] は 90 分 x 10 回を以下の 4 つの柱よって構成した。(1) 細胞の観察や専門用語を学び、また、再生医療実現に向けた省庁,大学等研究機関の取り組みを紹介し、「iPS 細胞と再生医療の基礎的な知識を身につける (3 回)」、(2) ケースメソッド「20 年後のある日 家族の病気発覚」を作成し医療の選択を仮想体験し,期待・不安・問題点等を想像する「未来を覗く (1 回)」。(3) 「科学成果を伝え考える (2 回)」、(4)「社会を創造する (4 回)」 では、高校生が将来の再生医療社会を実現するために各職種からどうすべきかを討論し発表会を行った。
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