研究課題/領域番号 |
26580072
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐久間 淳一 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (60260585)
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研究分担者 |
入江 浩司 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (40313621)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 言語類型論 / 統語論 / 非人称構文 / アンケート調査 / 国際情報交換 / フィンランド / アイスランド:スウェーデン / リトアニア |
研究実績の概要 |
【研究打合せ】6月8日に、日本言語学会第148回大会の会場校・法政大学において、今年度および研究期間全体の研究計画について打合せを行った。2月9日には、金沢大学において、今年度の研究経過の報告および次年度の研究計画に関する打合せを行った。 【各自の研究経過】佐久間(研究代表者)は、フィンランド語の非人称構文について文献調査を行うとともに、2月にはフィンランド、アイスランド、ドイツを訪問し、ヘルシンキ大学、アイスランド大学、ゲッティンゲン大学で、バルト海周辺諸言語の非人称構文に見られる統語的「ゆれ」について意見交換を行った。 入江(研究分担者)は、現代アイスランド語の非人称構文のうち、やや特殊な構成をとる天候表現を中心に研究を進めた。9月上旬に、アイスランド南西部に位置する首都と北部の一つの町で、それぞれ1人の母語話者に対し集中的な聞き取り調査を行うとともに、地域的・年齢的な変異の有無についての見通しを得るための試験的なアンケート調査を、20名ほどの母語話者を対象に行った。 當野(連携研究者)は、スウェーデン語における非人称構文および虚辞に関し、Svenka Akademiens grammatik 等の代表的な文法書および当該の現象を扱ったいくつかの論文の記述を比較検討し、非人称構文としてコード化される事態にどのようなものがあるか、人称構文と非人称構文の両方でコード化される(ゆれのある)事態にはどのようなものがあるかを調査した。 櫻井(研究協力者)は、3月にリトアニアを訪問し、リトアニア語の非人称文における統語的なゆれに関して、ヴィリニュス大学およびヴィータウタス・マグヌス大学の研究者と意見交換を行った。さらに、諸方言のネイティブスピーカーに聞き取り調査を行うとともに、非人称文における主格目的語の問題について事前アンケート調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度は、アイスランド、リトアニアにおいて、それぞれ、アイスランド語、リトアニア語の統語的な「ゆれ」に関する現地調査を行ったが、これは、交付申請書に記載した26年度の研究実施計画通りであり、現地調査の結果、研究期間内に研究の目的を達成するのに初年度の段階で必要なデータを、十分に収集することができたため。26年度は現地調査を行わなかったフィンランド語、スウェーデン語に関しても、現地調査に向けて、必要な事前調査を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は、26年度に現地調査を行ったアイスランド語、リトアニア語については、引き続き調査を進めるとともに、フィンランド語、スウェーデン語についても現地調査を行う。研究成果については、口頭発表や論文の形で公表に努める。各自が予定している研究計画は下記の通り。 佐久間(研究代表者)は、26年度の研究結果を踏まえて、8月に、フィンランドのオウル大学で開催される国際学会において研究発表を行うとともに、フィンランド語の非人称構文に関する現地調査を実施する。日程によっては、指導している大学院生が現地調査を代行する場合がある。 入江(研究分担者)は、引き続き、アイスランド語の非人称構文についての調査を進める。9月頃にアイスランドにおける現地調査を実施し、本年度に取組んだ天候表現について残された問題の解決を図るとともに、調査対象とする非人称構文の範囲を広げ、言語データの収集に努める。 當野(連携研究者)は、26年度の研究を踏まえた上で、人称構文と非人称構文でゆれのある現象に関して、①スウェーデン語のコーパス(http://spraakbanken.gu.se/korp/)による予備調査、および②スウェーデンで聞き取り・アンケート調査を行い、どのような要因が構文の選択を決定しているかを明らかにする。現地での調査は9月あるいは3月を予定している。 櫻井(研究協力者)は、事前アンケート調査の結果をもとに、アンケートに修正・変更を加えた後、本調査を行う。調査地は、非人称文における主格目的語の現象がより顕著に見られる高地東部方言話者の多い地域と、これと対照的に非人称文においても対格目的語しか見られない標準語の話されるカウナスを予定している。アンケート調査では、世代間の違いを検討しつつ、どのような通時的変遷がどのような共時的分布として現れるかを調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、研究分担者が、本研究課題とは別に科学研究費補助金の助成を受けており、双方の補助金で行った現地調査の調査地が同じであったため、往復の航空券の支払いにもう一方の科研費を当てたことにより、当初の想定より旅費が安く済んだことにある。また、研究協力者の現地調査の時期が当初予定よりやや遅れて年度末になったため、調査結果の整理に必要な研究補助者の雇用が次年度になったことも、次年度使用額が生じる一因となった。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究課題の特色の一つは、現地で行うネイティブスピーカーへのアンケート調査にあり、研究分担者がもう一つの科研費を持っている状況は今年度も同じであるため、そのことによって浮く経費は、他の調査地へ赴く旅費として有効に活用したい。翌年度分として請求した助成金の額では、本研究課題に関わる4名全員がそれぞれ調査地に出かけることは難しかったが、次年度使用額と合算することで、フィンランド、スウェーデン、リトアニア、アイスランドの各国での調査が可能となる。
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